「戊戌」(つちのえ・いぬ) | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2018/01/05 06:42

古代日本に措ける「えと」は兄弟を指し、兄を「え」、弟を「と」と現し、例えば聖徳太子の子である「山背大兄王」(やましろのおおえのおう)などを参照にしても解るように、「兄」を「え」と発音している。


「え」と言う発音を兄、若しくは姉とし、「と」を弟妹とする解釈も存在するが、こちらは男尊女卑の慣習を緩和する為に表記されるに至った可能性が有り、原則は「兄弟」である。


「十二支」は本来「えと」ではなく、「十干」(甲・乙・丙・・・)それぞれに「え」と「と」を割り振って陰陽を表した、この陰陽の割り振りを日本では「えと」と発音したのであり、兄の「え」を陽、弟の「と」を陰とするが、陰陽思想より十干の方が古い歴史を持ち、殷の時代には既に汎用された思想だった事から、或いは夏王朝時代には成立していた「暦思想」だったかも知れない。


西暦2018年はこうした十二支、十干の組み合わせで言うなら「戊」「戌」(つちのえ・いぬ」と言う事になるが、こうして「つちのえ」となっている事から「兄」、「陽」であり、「戌」(いぬ)は「陽」、つまり「陽」に「陽」となる。


日本では「犬年」と現される事が多いが、本来「戌」と「犬」は別字であり、「戌」は「滅」であり、草木がしおれて茶褐色になり枯れていく様子を現し、「滅」の本意はここにある。

すなわち枯れて死に絶えていく様を表すのだが、これが悪い事、悲しい事とは考えられていなかった可能性が高い。


「戌」が「犬」に置き換えられた時代ははっきりしないが、「犬」は大きな犬を指し、小さな犬は「狗」と現され、「狗」は断片や欠片の性質を意味し、「犬」は犬が吠えている様を横から見た象形文字に由来する。


だが「犬年」の「いぬ」の本来は「戌」であり、「戈」(ほこ)を基本とする「滅」である。

あらゆるものが姿を隠すの「陽」の「陽」であり、「陽」の重複は極太、つまり禍福いずれにしてもそれが大きく現れる事を指し、「戌」は「滅」、「滅」はまた「変」であり、この年には古来より大きな変事が起こり易いとされている。


決定的に「戊戌」(つちのえ・いぬ)に天変地異や大きな政変が集中している訳ではないのだが、古代中国の暦からも日本の古い暦からも、「戌」は大きな変事、或いは天変地異が起こり易いと書かれているものが時々出てくる。

どちらかと言えば政変、戦争、統治者の死亡、秩序崩壊、革命、クーデターのニュアンスが強いが、其の発端が大災害と言う場合も有れば、外交の失敗、経済政策の失敗と言う場合も有るかも知れない。


新年早々めでたい雰囲気に水を差すようで恐縮だが、千年も前から「戌」は「大きな変事」と記している者が時々存在する事を記しておこうかと思う。


文責 浅 田  正 (詳細は本サイトABOUT記載概要を参照)