「漆黒」 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2018/01/17 07:29


カラーチャートの黒は「#000000」と表示され、これは色の3原色を混ぜた状態、全ての光の波長を吸収し反射率が0の「状態」を言い、このようなものは地上に存在しない。

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従って漆器で言うところの「漆黒」は、正確には「黒」ではない。

カラーチャートでは「#0d0015」を指し、これは紫の濃い状態と言う事になるが、現実には「漆黒」と言う概念は個人々々によって異なり、正確な「漆黒」の概念は存在せず、ではなぜ「#0d0015」が「漆黒」になるかと言うと、これは概念の取り決めによるものだ。

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黒と白は結果的に光の吸収率と反射率、それに濃度である為、全ての色は白と黒に通じるものであり、厳密には黒の中にもこの世界に存在するあらゆる色が存在し、この中で「#0d0015」がなぜ「漆黒」と取り決められたかと言う点では、そこに日本の色に対する歴史が横たわっている事になる。

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紫の色は微量だがこの世界に自然な状態で存在し、この微量なるところから有史以来高貴な色として重用され、例えば「紫草の根」「酸化鉄紫」「巻貝の分泌物」などから採取されたが、「酸化鉄紫」以外は本当に微量しか採取されず、ちょうど金が何故高価なのかと言うと、その総量が微量な事、自然界では珍しい色である事からそうなったのと同じである。

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ちなみに「酸化鉄紫」は「暗色酸化鉄」の事を指し、自然な状態でも採取されるが、日本では「紫土」(しど)と呼ばれ、この流れから現在の黒め漆に使われる「水酸化鉄」などの発展が有り、こうした貴重な紫の集積が「黒」だった訳で、日本の「大化」年代に措ける「七色十三階冠」頃から、通常の紫と深紫、或いは紫と「黒紫」の区別が見られ、「七色十三階冠」によれば、同じ紫より黒紫の方が上位とされていた。

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そしてこうした律令時代の黒漆には「暗色酸化鉄系」が使われていた経緯から、漆器の黒の概念は「濃い紫」だった訳であり、では何故他の染料である紫草の根や「巻貝の分泌物」が使われなかったかと言うと、これらはいずれも漆の乾燥能力を低下させる、若しくはその能力を失わせる成分が含まれていた為で、正倉院宝物などに保管される漆の器が陽に透かされた時垣間見える紫は、間違いなく「酸化鉄系」の紫である。

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「漆黒」と言われた時、私たちはそこに吸い込まれそうな暗闇を思うかも知れないが、現実には古来より「漆黒」は「黒紫」だった訳で、こうした時代的背景から漆黒は「#0d0015」とされたのである。

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また地球の大気は波長の短い光を拡散させ易い事から、一番波長の短い紫の光が拡散される原理だが、光の波長成分は紫より青の総量が絶対的に多い、この事から空は青いが、こうした紫や青の影響は夜空でも微妙に影響される。

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従って我々が見ている夜空や暗闇も初めから紫に影響を受けた青が混じった黒と言える・・・。