2018/01/21 09:36

芸の「手捻り」(てびねり)の一種と同じ様式の技法が有り、漆に膠(にかわ)を混ぜでそれを粘度くらいの硬さに調節し、ちょうど古典的な素麺などの麺類を製造するときと同じように、手で押して転がし乍細い棒状に仕上げて、これを平面板の上で巻いて渦巻形を作る技法が有る。

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このように漆技術に関してはそれが漆独特の技術のように思われるかも知れないが、その現実は他の陶芸などの技術や食品加工技術と相関性を持っていて、決して単独の技術ではない。

むしろ漆芸の技術はデザインや造形で言えば陶芸、装飾などは料理などと深い関係が有る。

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漆器のデザインや造形のルーツは「陶芸」であり、デザイン的には陶芸のデザインが先に有って、これを模倣していく形が漆器デザインの流れであり、この事は古代から日本でも中国でも同じだった。

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また漆の調合に付いては、液体と粉末、その粘度や硬さの調整に措いて麺類の加工技術と密接な関係が有り、どちらが先かは解らないが、この2種の全く違う方向の技術はその根底を同じくしている可能性が高く、陶芸の土をこねる方法で「菊もみ」と言う方法が有るが、これなどは団子や饅頭の皮、麺類を製造する時にも似たような方法が出てくる。

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そして冒頭の膠(にかわ)と漆で作った渦巻きだが、これが日本に入ってきた時には仏像の装飾造形になり、後年仏壇の蒔絵技法の一種へと変化していく事になるが、このような膠と漆の好気性は、その後漆器の上塗り技法に組み込まれ、ここに「刷毛目塗り」や「たたき塗り」と言った、表面硬度の高い塗り技法を生み出すのである。

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だが書の世界にある「真」(真書)「行」(行書)「草」(草書)の思想で言うなら、こうした添加物を加えた上塗りは基本的には「草」であり、その表面硬度の高さから、伝統的な輪島塗の世界では「草」は裏面に使われる技術だった。

その理由は簡単な事で、ゴミがかかっても目立たず、こうした添加物を加えた技術は弟子の仕事だったからである。

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それゆえ例えば「布目仕上げ」「ヒビ塗り」なども輪島塗では「草」、「崩した形」となった訳で、テーブルの裏、お盆の裏などに多用された技術だったが、大体一つの世代が移り変わって行く期間は25年であり、この間に少し衰退したものは、次世代には忘れられて新しく見えてしまうものである。

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近年に至って表面が布目仕上げになったものや、ヒビ塗りなどが特殊技術のように考えられて来ている傾向が有るが、これは特殊技術ではなく、「草」である。

つまり「正規」が有ればそれに対する「非正規」で有り、簡単に言えば「手抜き」と言う事である。

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最後に「布目仕上げ」など「草」の仕上げのものは、サビ漆(砥の粉と漆を混合したもの)を表面に擦り込むと滑らかになるが、その端末はテーピングで養生する、若しくは器物の角などの形を木ヘラに切り込み、それを型ヘラとして最後に仕上げると、端末の精度が高くなる。

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素朴な風合いと「雑」な事は同じではない。