「縦木と横木」 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2018/02/18 07:34



輪島塗だけではなく「椀」を見る時、職人はまず親指と人差し指で上縁付近を弱くはさみ椀を一回転させるが、これは内縁と外縁に微妙な段差が無いかを確かめる為で、どんな微妙な歪みも段差もこれで知る事ができる。

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一度漆器店へ行ったらこうした撫で方をしてみると良い。

そこで嫌な顔をされたらその店は結構知識が有り、全く気にしないようだったら知識が無いと言う事になる。

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椀木地には「縦木」(たてき)と「横木」(よこき)と言う木地の取り方が有り、年輪に対して平行に木地を取る場合を「横木」、年輪と直角の角度で木地を取ったものを「縦木」と区別するが、見た目での区別は横木が板目状に見え、縦木は柾目状に見える。

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そしてこの両者にはそれぞれメリット、デメリットが有り、横木は縁が割れにくいものの木地そのものが歪み易く、長い燻蒸(くんじょう・燻しながら乾燥する)処理期間が必要となる。

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一方縦木は柾目である事から割れ易いが木地の歪みは少なくなり、時代が古くなればなるほど木地の取り方は「横木」が多くなる。

産地としては横木の木地産地が富山県庄川(とやまけん・しょうがわ)、縦木は石川県山中(いしかわけん・やまなか)が最も著名だが、横木の木地の取り方の方が同じ木材から取れる数が少なくなる為、現在は庄川では皿や鉢などを主体に木地生産が行われ、椀木地の生産は石川県山中地区が主流となっている。

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勿論漆器産地である輪島市にも椀木地は存在するが、元々が小規模な循環の中に有る事、それに現在に至っては木地も作品とする考え方が一般的で、この意味では塗り木地と言う概念からは外れてくるかも知れない。

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また椀の木地としては「欅」(けやき)が最高では有るが、材料の調達コストが高く、その殆どは「はんさ」が使われ、「とち」「銀杏」なども使われるが、「とち」や「銀杏」は極めて歪み易く、現在市場に出回っている「椀」の36%が中国漆器の椀であり、51%がプラスティックや合成樹脂、残りの13%が漆器産地の椀と言う事になる。

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しかしこうした13%の国内生産木製椀だが、その内の80%が中国漆器を国内で塗り替えたものであり、この点を考慮するなら日本国内生産の椀は極めて少ない流通でしかないと言える。

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輪島塗りのピーク時の総売上は180億円だったが、これが2012年度は42億円にまで減少し、しかもこの42億円の内の半分近くは中国製の椀の塗り替え加工や他産地漆器の塗り替え、それに中古漆器の塗り替えと修理と言う状態で有る事を考えるなら、現実に生産されている輪島塗がいかに少ないかを漠然と感じる事ができるだろう。