「+-0」 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2018/04/04 22:04



全ての物質はエネルギーである事から、この地球で人間が作るものは、最初からゴミになることが決定しているものである。

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物質の変化はそのエネルギーの質が汎用性を失って行く過程と言え、例えば石油などがプラスティックに加工された時点で、元の石油に戻すにはその倍以上の物質、言い換えればエネルギーを消費しないと再生する事が出来ず、それ以上にガソリンを使って車が走行した場合、燃焼してしまったガソリンのエネルギーは熱や運動に変化し、これらは今来た道を引き返したとしても未来永劫戻ってくる事は無い。

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従って物を作る場合でも、それがどんなに素晴らしい物で有ったとしても、地球的にはゴミを作っている事になるが、木や漆は熱力学第二法則の外に有って、これらはいずれ失われて行き、また再生される「生物素材」と言え、この観点では+-0の物、最悪でもそれを製作するために失われたエネルギーのみを劣化させるに留まる、非エネルギー劣化物と言える。

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こうしたエネルギーは、基本的に宇宙に存在するエネルギー総量が変化しないとするなら、人間が生存し続ける限りどんどん劣化したエネルギーで満たされて行く傾向の 対極に有る物と言え、それゆえに取扱いや製造作業に多大な人間の労力を必要とするので有る。

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だが今の社会はどうもこうした+-0の製造物、1000年、2000年前から存在する伝統的工業産出物から離れつつ有り、この点に鑑みるなら地球は加速度を付けてゴミ、或いは未来にはゴミとなるものを生産し続けている事になるが、経済はより便利なもの、より時間を短縮するものを世に出すことで消費を喚起し、この事が劣化エネルギー傾向に拍車をかけている現実を見なければならない。

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つまり経済の加速は地球をゴミの星とする事の加速でもあり、この中でどの国家も経済の発展を目指すが、その結果はジワジワと自身の生活環境が首を絞められていく事が省みられていない。

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もし経済や消費の発展がマイナスになるなら、おそらく熱力学第二法則のエネルギー劣化速度は遅くなるだろう。

人間は一番身近な事で言えば空気や自然を只の物と考え、それらを消費する事には何等躊躇が無いが、それらにしても有限で有る事を考える時期に来ている。

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経済の発展ではなく、どうして影響を少なくしながら経済を縮小して行くかを考えなければならない時が訪れている。

少子高齢化社会は日本だけではなく、中国もロシアも韓国も同じ事で有り、この中で日本のそれは間違いなく一番先進的傾向を持っている。

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集約して言うなら、これまで発展しか考えてこなかった経済に対して、日本こそが初めて縮小して行く経済のモデルケース、ある種未来に措ける世界経済の在り様、秩序を示していく事になるのかも知れない。

そしてもしかしたら人間が生きる意味は無いのかも知れず、例え輪島塗と言えども程度の差は有れ「物」で有る以上ゴミかも知れない。

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だが、そこに意味が無いと知った時から、それがもしかしたらゴミかも知れないと知った時から、そこから「人間」と「物」の価値が始まって行くのかも知れない・・・。