「自宅で出来る超硬派伝統金継ぎ」・2 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2019/03/05 21:40

前記事で接着材で綺麗にくっつけるやり方を書いたが、一般的にはこうした工程の後、先の細い筆を使って「合成漆」で接合面をなぞり、この上から金粉を撒く形式を「金継ぎ」としている教室が殆どかも知れない。

 

が、ここで出てきた「合成漆」とは基本的にはただの塗料であり、風や温度で自然乾燥するため、すぐに金粉を蒔く事になる。

天然漆は湿度と温度で乾燥するため、加湿と言う工程が必要になり、しかもタイミングが早ければ金粉は沈んでしまい、遅ければくっつかなくなる。

 

天然漆の価格は、小分けにしたものほど割高になるが、3・75kgのの単位で買えば5万円ほど、チューブ入りの50gだと600円から800円だが、日本産漆の場合は50gでも5000円前後の価格になっていて、ちなみに合成漆の原価は1kgが3000円前後、これでも高いくらいかも知れない。

 

そして使われる金粉だが、こちらも大方はLG粉と言って、元々は印刷用の合成箔を細かく砕いて金粉にしたものが使用されていて、よしんば本物の金を使っているとしていても、蒸着金(じょうちゃくきん)と言って、金メッキ工法で作られた金の薄い膜を砕いて粉にしているものが上限かと思う。

 

価格は前者がB5版ほどの袋に入って3000円ほど、蒸着金は3gが4000円ほどで、本当の金粉だと「けし粉」と言って一番細かい粉でも3・75gが44000円くらい、「一号丸粉」と言う一番荒い粉は同じグラム数で価格も「けし粉」と変わらないが、荒い分実際に蒔ける面積は少なく、「けし粉」の10分の1くらいの面積しか蒔けない。

一般的な金継ぎ教室で天然漆が使われない理由は2つ、第一に天然漆は「かぶれ」の恐れが有るからであり、第2には接着剤での接合だからである。

 

市販されている強力接着剤では、天然漆との嫌隔性が問題となる。

つまり接着材の上からでは天然漆の剥離が発生する為、一般塗料と成分が変わらない合成漆が用いられる訳で、前記事で、接着材はシアノン系としたのは理由が有る。

 

実は数有る接着材の中でも、シアノン系接着剤は漆と嫌隔性が弱い、簡単に言うならこの接着剤なら上から天然漆を塗っても剥離しないのである。

 

ただこうして嫌隔性の弱い接着材で接合し、上から天然漆を使って本物の金粉を使ったとしても、正当な金継ぎとは認められない。

あくまでも接着材接合、金継ぎ風装飾の領域を出ない訳で、例えば文化財級の陶器修理の場合では絶対認められないし、接着材接合は陶器全体を堅く感じさせる効用を持つ。

 

恐ろしい話だが、持ってみればそれが如何に上手く出来ていても、接着材接合か天然漆接合かが、何となく区別できてしまう人間が世の中には存在すると言う事である。

 

大切な陶器、想い出の有る陶器で有ればこそ、人に見せる「金継ぎ風」ではなく、自身が一番納得できる伝統の技に挑戦するのも悪くないかも知れない。

 

道具や材料はトータルすれば結構な金額になってしまうが、例えば3ヶ月かけて金継ぎをする場合、道具や材料を一度に揃える必要は無く、1回に数百円から2000円前後でそろえて行けば、最後に「金継ぎ屋」が出来る道具が揃う事になり、金粉も「けし粉」なら共同買いすれば、その一包みで100個前後の金継ぎが可能かも知れない。


単価に換算すると、天然漆が800円で10個継げたとするなら1個が80円、「けし粉」で100個とまで行かなくても、70個仕上げられれば、1個あたり280円と言う事になるが、漆は接合用の「生漆」(きうるし)と、線を引く為の「朱合漆」「しゅあいうるし)が必要なので、この上に30円ほどの追加と、赤か黄色の粉が必要だが、これは300g1箱が3000円ほど、1個買えば何千と言う単位の金継ぎが出来る。