「自宅で出来る超硬派伝統金継ぎ」・5 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2019/03/08 05:26

4枚以上に分離した陶器と言うのは、それが見えるか見えないかはともかく、何某かの情念が働いていないと、そこまで細かく割れることはない。

それゆえ、これを金継ぎする場合の心得は、それを超える情念と言う事になる。

解り易く言うならめげてはいけないと言う事である。

 

最初に用意する物は、4枚以下の金継ぎと同じだが、これとその器物の内側に入れて若干溢れる程度の「粘土」、セロテープを多めに用意する必要が有る。

 

まず最初に割れた陶器の破片を外側からセロテープで繋ぎ、大まかな原型を復元する。

それを更にセロテープで上から下までぐるぐる巻きにして、少し動かしたくらいではバラバラにならない程度までにしたら、内側に粘土をどんどん詰め込み、口よりも少し出る高さまで粘土を詰め込んだら、力を入れずぎないように上から圧す。

 

そしてこれを何でもいい、木の板の上に置き、今度はぐるぐる巻きにしたセロテープ、つなぎに使ったセロテープを外し、元の破片の状態に戻し、陶器内側の「型」となった粘土の上にサランラップを適当に細かくちぎって隙間なく置いて行く。

 

この工程を省略すると、接合した際に内側へはみ出る麦漆が粘土の油性と接触し、乾燥強度を奪われるからである。

むかしなら新聞紙を細かくちぎって水を付けてそれを貼ったのだが、これは後に漆とくっつく事が多く、乾燥に時間のかかる麦漆には向かない。

 

ここまで出来たら後は4枚以下の破片金継ぎと同じで、一番大きな破片から麦漆を付けて粘土の型に置いて行き、次ぎの破片の端を押しながら、これを連続して行くのである。

 

そして最後の破片を押し込めたら、割り箸などで破片同士に上下が出来ていないかを少し圧して確かめるのだが、この時が要注意であり、僅かでも圧しすぎて粘土まで引っ込ませてしまうと、乾燥した時に左右の破断面に段差が出来てしまう。

僅かな段差なら、この接合ラインに沿って金蒔きを行うから、目立たないが、大きな落差になってしまった場合は、最初のセローテープ繋ぎからやり直しになる。

 

しかも一度漆が付いているから、これを灯油で綺麗にふき取り、更にシンナーなどで拭いて油性を洗浄してからやり直しと言う事になる。

 

勿論、こうした粘土の型をを取らずに作業する事も出来るが、よほど慎重にやらないと、左右の破断面の段差は消えず、途中で僅かでも動けば接合は一瞬にして崩壊し、その可能性は極めて高い。

 

更にここまで今日やって、残りの半分はそれが乾燥してからと言うやり方では、間違いなく上手く接合できない、あるいは段差だらけになってしまい、これは接着剤でも同じだから、乾燥速度の速い接着剤では基本的に10枚以上に分離した陶器の、綺麗な接着は不可能と言える。

破片が多くなっている物ほど一度に全て接合し、成型をしなければ形は歪んでしまう。

 

粘土の型を取らずに行う10枚以上に分離した陶器の麦漆接着は、何故そんな無理をしなければならないのかと言えば理由が在る。

麦漆のはみだしを後に利用する為であり、このはみ出しを綺麗に利用したものこそ金継ぎの最高強度と、風情を醸し出すことになる。

 

ただしこれは職人でも運任せの部分があるので、一般工法としてはお勧めではないが、

金継ぎの最も初期段階の麦漆接合、この段階から後に漆のはみ出しを利用するか否か、どちらがその陶器の景色の合うか、それを見通しておく必要が有ると言う事である。

 

また破片に欠損のある場合、接合時はその部分に穴が開いたまま接合し、1週間ほど後粘土の型を外したら、その部分だけもう一度粘土の型を作り、その上にサランラップを乗せ、今度は接合時より少し柔らかめの麦漆を調合し、それをガラス板にフライパン返しで薄く延ばし、「日本手ぬぐい」かガーゼを、その欠損部分より少し小さめに切り取り、これをガラス板に引いた漆の上に置き、その上からもう一度麦漆をフライパン返しで均等に引き延ばす。

 

上下を漆でサンドした繊維を作って、それを内側に粘土の型を置いてある欠損部分に置き、陶器との破断面まで麦漆を付け、欠損部分を繊維で補う。

そして更に1週間後、その部分には生漆8に対して砥の粉10の割合で練り上げた「さび漆」をパテで補修する要領で少し盛り上げた感じにまでしておき、これを内側をタオルに水を付けて拭いたダンボールの箱などに入れて翌日まで置いておく。

「さび漆」は化学反応ではないので、湿度を加える必要が有る。

 

この技法の詳細は後に詳しく解説するが、破片が10を超える陶器は、こうした観点からもそれを復元するに足る情念が有るか否かが問われる訳である。

 

粘土で型を取る技法、これの基本は「脱乾漆技法」(だっかんしつ・ぎほう)と言って、基本的には弥生後期に日本に入って来た中国の技法を基にしているが、比較的造形が自由な為、現代では多くの漆芸作家がこの技法で作品を制作している。

そしてこうした簡単な器物の型取り技法を複雑に組み合わせたものが興福寺の阿修羅像なのである・・・。


おっと、大切な事を忘れていた。

セロテープで復元した陶器を粘土の型から外す時、これを外し易くするには先に粘土の表面に水を塗っておくと良いが、これも量を間違えるとややこしいので、先に復元した陶器の内側にサランラップを敷いてから粘土を入れて行くのも悪くないかも知れない。

 

また粘土の型から陶器を外す時、これが綺麗な円形の茶碗なら良いが、大方の陶器は綺麗な円では収まっていない。

それゆえ型に乗せてテープを外す際は、一番大きな破片の外側口元に印となるテープを小さく貼って置き、粘土の下面にもそのテープの左端にあわせて一本の線を入れて置くと、漆を付けて繋ぎ合わせるとき、型と破片がずれずにすむだろう。

これは結構大事なことだった・・・()