2019/03/12 06:18

「超硬派伝統金継ぎ8」で乾燥が終わったものは、その麦漆接合した上に色漆を塗った部分は線状に低くなっているはずであり、これを#600番くらいの耐水ペーパーなどで軽くなぞるように研いで行く事から次の工程が始まる。

 

この時少量の水を付けながら撫でるようにして研ぐのだが、これは周囲の陶器部分を傷付けないことが1点、もう1つは水を付ける事で、陶器の上にベンガラ漆などの色漆が乗っていて、しかし食いつきが悪い部分は水を付けている時に剥がれてくる為であり、いずれ外れていくものは後生大事にするのではなく、早めに落す事が肝要になる。

 

全ての部分を研ぎ終えたら今度は水を付けて固く絞った綿の布などで拭き、次は乾いた綿の布でふき取っておく。

この時の注意点は研いだ部分を手で触らない事で有り、手で触って油脂が付くと、その部分だけ乾燥速度は遅くなる。

 

これが終わったら何でも良いから、油の付いていない筆か刷毛で研いだ漆の線の上のゴミを掃きだすように掃っておく。

 

ガラス板に灯油を付けて綿の布で綺麗にふき取り、チューブ入り漆なら漉す(こす)必要は無いが、顔料と朱合漆を練りこんだ場合、或いはそれをサランラップで包んで保管していたものを使う場合は、漆の中のゴミを取る作業が必要となる。

 

漆器材料店は東京都でも10軒程は残っているが、これこそインターネットで検索し、そこで吉野紙(よしのかみ)を買い求める。

20枚、50枚と言う単位でも売っているが、価格は300円くらいから始まり、100枚入りなら1000円くらいするかも知れない。

 

この吉野紙も現在では手漉きのものと、一部合繊のものが存在し、一部合繊のものの方が値段は安く、しかも紙も破れにくい。

手漉き吉野紙は価格も高く、初心者が扱うには紙が破れ易いかも知れない。

 

この紙には裏表が在り、紙を頬に付けるとすべすべする方が表、これより少しザラザラする方が裏であり、横長の紙を2枚に折って、すべすべする方が両側になるようにして、折り目がある方を左に、2枚になっている方を右に持ってくる。

こうすれば、紙の繊維方向が常に左右になる為、紙は破れにくくなる。

 

こうしてガラス板に置いた吉野紙の上にゴミが入っている漆をあけ、まず上下に2つに折ってから両側をキャンディーの包み紙のようにねじって行く。

右側は外側に、左側は内側にねじって行くと、漆が入った小さなキャンディーのようになっていき、それを更に絞っていくと、中央部分から紙の繊維を通り抜け、色漆が下に落ちてくる。

 

この漆を油を搾り取って拭いてある筆につけ、再度同じ線をなぞっていくのである。

ここまで来ると漆は黄色を使った方が良いかも知れない。

金色は赤の下漆だと重厚に見えるが、薄いと赤が透ける。

それゆえ黄色にして置くと透けても赤く見える事は無くなるからであり、黄色漆の調合の仕方はベンガラ漆と同じだが、粉の分量は漆10、粉10の比率にしておかないと、乾燥すると黄色ではなく黄土色になってしまう可能性がある。

 

乾燥の要領はベンガラ漆と同じで、6時間から12時間休ませたら、段ボール箱の内側を水で濡らしたものの中に入れ、翌日はこれを行わずに、翌々日から朝夕2回加湿して3日、4日目は常温、外気に晒して乾燥を完成させる。

 

ちなみに漆を塗って何故すぐに湿度を加えないかと言うと、「なおり」と言って、表面張力で表面が滑らかになって行く時間を得る為である。

 

これと同じ工程は、描いた漆の線の断面が蒲鉾(かまぼこ)の上面のように丸く盛り上がるまで続ける必要が有り、麦漆のはみ出しを利用する場合は、陶器の上に丸い円筒状で乗っている麦漆の断面両端が、山のように少し裾広がりになるように持っていく必要が有る。

 

滑らかな線になるまで塗り込みと研ぎを続け、大体これを3回か4回繰り返したら、最後仕上げになる。

 

漆の塗りこみは2回目以降と同じだが、これが塗り終わったら、すぐに水で内側を濡らしたダンボール箱の中に入れ、夏なら20分おき、冬なら30分おきに確認して、息を吹きかけたら、漆の表面に薄っすらと虹色が現れる瞬間を待つ。

 

そして金粉、ここでは「けし粉」でも「一号丸粉」でも良いが、それを真綿を飴玉くらいにちぎったものに付け、上から軽く叩くようにして置いて行く。

この際金粉が少ないと真綿の繊維が先に漆にくっ付いてしまう事になる為、必ず金粉をつけて漆の表面に持っていく事が肝要で有る。

 

この作業が終わったら、すぐにまた内側を水で濡らしたダンボール箱の中に金蒔きを終えた陶器を入れ、翌日までそのままにし、翌日もう一度ダンボール箱の内側を濡らした中に入れ、その次の日に取り出したら、「けし粉」を使った場合は鹿皮、「一号丸粉」を使った場合は軟式のテニスボールを半分に切ったもので、金の表面を軽くこすって行く。

 

こうする事で金の上に出てくる漆の曇りが取れ、丁度川底に沈む砂金のような重厚かつ上品な金色が発色する。

 

漆がかすれて金が付かない部分が出来た場合は、この最後の工程をやり直す事、そこだけ部分補修しても段差が生じてしまうし、

金が薄くなる場合は、おそらく金を蒔くタイミングが遅れている可能性が高い。

 

金を蒔く前、息を吹きかけた時、薄っすらと虹色ではなく、薄っすらと白く反応してくる場合は、既に金を蒔くタイミングを通り過ぎているので、この場合は、もう一度しっかり乾燥させ、最後の工程をやり直す必要が有る。

 

これを「まあいいか・・・」などと考えていると、水につけて洗っただけで金が落ちてくると言う事態を迎える可能性が出てくるのである。

 

さて超特急で進めて来た「超硬派伝統金継ぎ」はこれで終了するが、この次はいつか、自宅でカッターナイフと接着材で作る、オシャレな漆塗り醤油差しなどの企画もやってみても良いかも知れない。

 

いずれ気の有った仲間と郊外に空き家を借り、終末に集まって金継ぎや台所小物、什器などを自身が天然素材の漆で仕上げ、フリーバザーなどで販売する、そう言うセカンドライフもまた悪くないかも知れない。

 

こんな事を書くと、また伝統工芸の重鎮たちに「漆はそんな軽いものではない」と怒られるかな・・・()

 

次回から平常の記事に戻ります。

どうぞ、宜しく。