2019/03/15 06:20

悪性腫瘍、いわゆる癌の中で男性の死亡率が一番高いのは「肺癌」だが、女性では「大腸癌」の死亡率が一番高い。
しかし女性の癌死亡率が一番高い「大腸癌」と、女性の「肺癌」による死亡率の差はごく僅かなものであり、緩やかなカーブを描いて低下しつつある「胃癌」に相対し、「肺癌」の発症者は増加傾向にある。
 
「肺癌」を発症する主な原因は「喫煙」にあり、その為男性の癌死亡率が高くなっているが、女性の場合は自分に喫煙習慣がなくても、夫や父親が同じ部屋で喫煙をしている場合は、その室内の煙を吸うことによって一定の喫煙習慣と同じ効果が発生し、これが原因となって肺癌を発症する場合があり、これを「受動喫煙」による肺癌発症原因としている。
 
また女性の場合は「脂肪摂取」も肺癌に影響していると言われ、近年に至って健康志向が向上しているにも拘らず、女性の肺癌が減少しない理由には、自動車社会がもたらす排気ガスの増加、さらには大気汚染などにその原因が求められているが、一方で食生活の変化から「脂肪摂取」が増加している現実もまた、女性の肺癌増加傾向の要因の一つと考えられている。
 
ちなみにこうした肺癌に対して、その予防措置的効果が認められるものは野菜、果物などだが、これは主に脂肪摂取を抑制することで、癌が発症する可能性を低下させるものであり、既に癌を発症している場合に措ける野菜や果物の摂取と、癌症状の改善には明確な効果の臨床結果が証明されていない。
 
肺癌は肺門から比較的太い気管支で発生する「扁平上皮癌」、その他「小細胞癌」「大細胞癌」と末梢肺に発生する「腺癌」が主な種類だが、女性の肺癌では「腺癌」の割合が高く、しかも肺癌は一般的に進行してから見つかる場合が多くなるので、治療成績は悪くなっている現状がある。
 
このことから肺癌に措いては既にステージが進行した場合、手術による治療を断念せざるを得ない場合が発生してくるが、そうした場合に一定の治療効果があり、また癌細胞の拡散を抑制するのが「ゲフィチニブ」(gefitinib)、薬品名で言えば「イレッサ」である。
 
「上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤」、日本語で言えばこのように分類される「イレッサ」、上皮成長因子受容体「EGFR」は、非小細胞癌を含む多くの悪性腫瘍で過剰に発生し、腫瘍の増殖、維持に深く関与していて、なおかつ「EGFR」が過剰に発生した腫瘍は高い転移性を持っている。
ゆえに「EGFR」チロシンキナーゼを選択的に阻害し、腫瘍細胞の増殖をもたらすシグナル伝達を抑制することによって、抗腫瘍効果を得ようとするのが「イレッサ」となる。
 
手術不能の場合、または再発非小細胞癌に措ける癌抑制、治療に効果があり、細胞の増殖を制御するL858Rと言うたんぱく質の遺伝子に変異がある患者の生存率では、変異のない患者に比べて、1年以上の延命効果が得られたと言う研究報告がある。
 
また小細胞肺癌に付いては「塩酸ノギテカン」(nogitecan hydrochloride)が有るが、これはDNA合成を阻害し、細胞死を誘導することで癌を抑制、または改善しようとするもので、小細胞肺癌の進行、再発に対して23・3%の症例で、効果があったとの臨床結果が得られている。
 
そして副作用に関して、2006年に出された厚生労働省の調査によれば、「イレッサ」投薬治療の副作用と見られる「間質性肺炎」などでの死亡例の報告が、それまでで643人となっていることから、同薬剤の使用に関して、投薬対象患者の選択が求められるとしていて、「塩酸ノギテカン」の副作用についても、白血球や赤血球の減少、悪心、嘔吐、食欲不振、脱毛、発熱、疲労感などがあるとされているが、重大な副作用として「骨髄抑制」、つまりは汎血球減少、好中球数減少、ヘモグロビン減少、血小板数の減少などが上げられている。
                                                       「女性の肺癌」2に続く