「人と動物を繋ぐ影」・2 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2019/04/27 06:03

「トキソプラズマ症」、この病原体の「トキソプラズマ」は猫科の動物を最終宿主とするが、殆ど全ての哺乳類は中間宿主として利用される。
感染した動物の生肉や加熱が不十分な肉を食べた場合、汚染された手や指、食器などを通じて口から摂取することで感染するが、感染動物の糞便中に存在している「オーシスト」(虫体)の吸引でも同じように感染する。
 
病原菌自身はその殆どが「不顕性感染」、つまり症状を発症しないパーセンテージが多いが、それでも感染者数で言えば日本の全年齢層で、30%前後がこれに感染していると見られていて、人間では妊娠中の女性が感染する「先天性トキソプラズマ症」が存在し、この場合は死産、若しくは流産と言った重大な結果をもたらすケースもある。
 
そして犬、猫で言うなら「パスツレラ症」(pasteurellosis)なども犬や猫の口の中存在する「パスツレラ菌」が原因の感染症だが、この菌の感染経路は犬や猫に咬まれたり引っかかれた場合もさることながら、動物とキスすることで感染する「直接感染」や、間接的な「飛沫感染」の2種類の感染経路が存在することで、「パスツレラ菌」の口の中の保有率は猫が100%、犬でも50%前後が保有している可能性がある。
この感染症の症状、その約55%は呼吸器系の症状で、例えば咳の原因や呼吸障害、その他外傷的には「猫引っかき病」と同じ症状がある。
 
また「オウム病」(psittacosis)、この名前は誰もが一度は聞いたことが有ると思うが、オウム、ハト、インコなどの鳥類を感染源とするこの病原体の正体は「クラミジア」(Chlamydia psittaci)であり、鳥類の排泄物の中に存在している。
鳥類がこの病原体に感染すると餌を食べなくなり、鼻汁を流して下痢を引き起こし、他にも結膜炎や肺炎など色んな症状を発症するが、これが人間に感染した場合、呼吸器官系に症状が発症し、咳、胸痛、咽頭炎、発熱の他、筋肉痛を引き起こすこともある。
 
更に「エキノコックス」(echinococcosis)、これは医学用語でも出てくるが「包虫症」のことであり、この病原体の「包条虫類」は小腸に寄生し、最終宿主はキタキツネや犬などの肉食獣で、人間はこれら最終宿主に寄生するための中間宿主となる。
人間に寄生した場合、拒食症だと思われた症状が実はこの「包条虫」に寄生されていたと言う例がある他、下痢、発熱などの症状を発症するが、最終宿主にキタキツネの存在があることから、北海道に多い地域感染症と言う側面も持っている。
 
それから「サルモネラ感染」(salmonellosis)、サルモネラ菌は腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌などと同じで、食中毒症状を引き起こす病原体だが、河川や下水などに存在していることは勿論、ニワトリ、犬、猫、豚や牛などにも広く存在している菌で、特にカメやイグアナなどの爬虫類では、90%近くがサルモネラ菌を持っている可能性がある。
 
この他牛や豚などの腸内細菌である「エルシニア」による「エルシニア感染症」、犬や猫などの糞便、肝臓、肉などの生食によって感染する「回虫症」、野ウサギとの接触によって感染する「野兎病」、狂犬病ウィルスに近似し、コウモリなどが媒介する「リッサウィルス感染症」、感染動物の「乳」や尿から感染する「Q熱症」など、一部大まかなものでもこれだけの種類の人獣共通感染症が存在するが、感染経路も特定できず、ただ推測としてサルが感染源なのではないかとされた「エボラ出血熱」に至っては、空気感染の可能性が高く、その発症率は粗90%、死亡率は80%を超える、そんなものまで存在している。
 
またかつて猛威を振るった鳥インフルエンザ「H5N1」などは、確実に空気感染であり、しかも僅かな期間で鳥類だけではなく、豚や人間にまで感染力を獲得していったことを考えるなら、我々人類はこうした感染症との脅威と常に隣り合わせであり、この瞬間にも彼等と生存を賭けた共生、そして攻防を繰り返している。
 
もし人類がこうしたウィルスや細菌を完全撲滅しようとしたり、そうしたものが存在しない環境を作り出そうと考えたなら、そこに待っているものは確実な「人類滅亡」であり、生物界の頂点に立つ人類の上には、生物界の最下層、いやそれ以下に定義されている、生きているとさへ言えないような、ウィルスや細菌達が立っているとも言えるのである。
 
つまり生物界の弱肉強食のシステムはピラミッド型ではなく、砂時計のような形が連続している形、若しくはピラミッドの頂点が最下層に融合した、三角形を丸めた形のようなものなのかも知れない・・・・。