「赤い花」・1 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2019/04/30 05:37

激しい轟音と共に地上にあるあらゆる物を巻き上げながら進む竜巻、この竜巻が次にどこに進んでくるかは予測が難しい。
だが竜巻は必ず何某かの根拠が有って、その進路に進んでいるが、それは人間には理解することができず、またそこに一定に法則を見つけたとしても、それは未来に措けるあらゆる不確定性要因によって、いつかは法則ではなくなってしまう。

だがしかしこの竜巻の情報は閉じられているのかと言えば、竜巻の情報は全て開かれているのであり、形状、破壊力、音、停止状態の物質に対する風の移動速度など、殆ど全ての情報が外に開かれている。
ただ「進路」と言う未来に措ける状態が不確定性を持つが、これは全ての物質、生物が持つ基本的な在り様とも言える。

この世界を考えるとき、そこに存在する物質や生物がその自由意志、若しくは本能の自由性によって全てが成り立っているのか、それとも古い時代の宇宙論と同じように、例え真空でも何某かの物質が存在し、全ての空間が満たされている状態なのかと言う事を考えるなら、実は宇宙空間については密度と言う均衡性が有り、この点で宇宙は漠然と満たされた状態と言え、これが地球のように閉じた世界であれば、おそらく物質や生物の存在の自由性は無く、あらゆる物が隙間を埋めてパズルが完成し、そのパズルは瞬間ごとに埋まった状態、つまりは完成した瞬間下に落ちて、また次の瞬間のパズルが現れると言うようなものなのかも知れない。

すなわちあらゆる存在は、その存在の自発的な部分によって成立するのではなく、常に存在する可能性を持ちながら、空間的隙間の出現によってしか存在できない可能性を持っているが、このことは全ての物質や生物を含めて、閉じた世界では「限界」が決まっていて、如何なるものに形が変わろうとも総量的存在は増減できない事を示している。

こうしたことから物質や生物の形状を考えるなら、そこに全ての情報が外に対して開かれている現実は、実はこの世界、つまり地球が閉じた空間である事に端を発しているように考えられる。
例えば花はその形状によって、空間的にどの位置をどれだけ占有しているかを示しているが、これは空間的存在の確定を示していて、すなわちこの空間には重複できないことを外に対して示している。

同じように人間も全ての情報を外に対して開いているが、この情報とは形状のことであり、また外に対する客観的表情、すなわちその人間が外に対して及ぼす影響の情報はいつでも外に示されている。
その上で先の花の情報との関係を見てみると、本来危険信号の「赤色」の花だったとするなら、では人間は同じように赤に黒の斑点が入った「笑い茸」には危険性を感じても、「赤い花」には同じ危険性を感じる事が無いのは何故か・・・。

この点に注目するなら、この世界の物質や生物の外に開かれた相互の情報は、歴史的な相互認識とその発展性を持っていると言うことではないだろうか。
つまり相互に相手のことを知ろうとして、「知りたい」と言う情報が開かれ、これに対して相手がその情報を読み解くツールを発していく事で、相互に情報がやり取りされ、これは何も花に限らず、物質でも同じようなことが行われてきたのではないかと考えられる。

同じ厚さの木の板と鉄板では加重に対する耐性に大きな差が有るが、では何故この事を人間は知っているのだろうか。
勿論経験と言う事も有るが、木の板も鉄板も、その情報が外に対して開かれているからこそ、その情報を人間が知ることができ、そして自分の体重と鑑みて、木の板は渡ると危険だが、鉄板は大丈夫だと判断できるのである。

人間の持つ情報処理能力、また知っていることと言うのは大変範囲の狭いものであり、例えば2つのサイコロを振って、1の目が2つ出る確率と6の目が2つ出る確率は等しい。
しかしサイコロの1の目が赤くなっていると、同じ確率で出てきても1の目が2つ出てくる方が珍しく感じてしまう。

尚且つサイコロを100回振って得られる統計と、10万回振って得られる結果とではそこにばらつきが有り、例えば最初の100回で1の目が2つ揃う場合が多ければ、人間はそこで特定の「傾向」を感じてしまうが、これはしかしより多くサイコロを振って行けば全ての確率は等しくなっていく。
人類の歴史はどれだけ長くてもせいぜいが100万年ほどであり、地球の歴史である46億年、生物の歴史である37億年と言う単位に比して余りにも脆弱と言える。

人類が持つ現象解析科学では、その大部分がこうしたサイコロの確率分布の不均衡を真実として考え易いが、実は全ての存在の在り様は「逆べき分布」であることを考えるなら、そこに意味は無く、何らの傾向も無いとすべきものなのかも知れない。
また同じように人間が科学に対する反動として持つ「感覚的崇拝」、つまり感覚偏重は更に現実から離れたものであることにも気が付きにくい。

                             「赤い花」・2に続く