2019/05/01 06:03

経済はマクロもミクロもその原理は同じことであり、ミクロのまずさはマクロのまずさとなり、この両者はずるずるとマズイ関係を続け破局していく男女の在り様と似たようなものだ。
そして人間は一度こうした状況に陥ると、その必死な状況からそれらしい上手い言い訳を考えるようになる。
今夜はいつしか忘れられた国の借金、国債や公債の元々の原理を考えてみようか・・・。

所得と消費を考える流れとして、まず最初に考えるべきは「短期ケインズ型消費関数」と言うものだが、これは基本的には所得が上がってくるに連れて、その所得に占める消費の割合は低下すると言うもので、これは幾ら多額の所得を得ようとも、いきなり一度に100杯のご飯が食べられない事を考えれば分かるが、こうした状況でもその質が向上したり、高級品を使うなどして、また高額所得者数は少ないことを考えるなら、長期的、マクロ的には所得とその所得に占める消費の割合は一定の比率を持つと言う理論だ。

20世紀を代表する経済学者のジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)がはじき出したこの消費関数は、このように長期的には約45度の比例状態を表すが、短期的にはこれが極端に所得側に倒れた状態になる事から、ケインズ型で所得と消費を考えるなら「今の所得が今の消費を決定する事になり、これを「絶対所得」と言う。

これに対して所得はその人間が未来の全期間を通して得れると予想される所得と、短期的な一時所得によって構成されるとしたのが「M.Friedman(フリードマン)であり、この内生涯にわたって平均的に得られる所得を「恒常所得」、短期一時的な所得を「変動所得」と言う。

そしてここで言う「恒常所得」とは一般庶民の給与を指すが、「変動所得」は、例えば株式売買所得などの短期所得を指し、こうした所得の増大は、所得に占める平均消費性向を短期的には押し下げるが、結果として短期所得が減少した場合は、この反対で所得が減った分だけ、所得に占める消費の割合は増大することになる。

このことから変動所得が大きい人ほど、平均消費性向は小さくなり、また長期的には変動所得の影響は小さく、恒常所得と消費は比例的に増大していくと考えられた。
つまりその心情や性格はともかく、金持ちは統計上も「ケチ」になってしまうと言うことであり、現実には金持ちは少ないことから、社会全体としては所得と消費の関係はほぼ比例して伸びていくと言う話だ。

また「F.Modigliani(モジリアーニ)は、その個人が生涯に渡って稼ぐ事ができると予想される労働所得と資産所得が消費を決定すると考えたが、この労働所得と資産所得の合計を「生涯所得」と呼び、人の一生を、労働人口の中にある現役世代と退職後の老年期に大別するなら、現役世代は貯蓄し老年期に備えようとするが、退職後にはその貯蓄を取り崩して消費を行おうとするのが、基本的には年金も含めた貯蓄とその消費の考え方となる。

それゆえ、それぞれの人が生涯所得を平均した、平均所得の中から毎年消費を起こすならば、どこか一つの時点を切り取って見ても資産は一定なので、現役世代の人は所得が増大するに従って、その増えた分は貯蓄に回って行き、結果として貯蓄は増大し、所得に占める消費性向は減少した事になる。

その逆に現役が終わった老年期世代では、所得が減少していく事から貯蓄率は低下し、結果として所得に占める消費性向は増大していくが、長期的、マクロ的に経済全体を考えるならば、生涯所得と消費はやはり比例関係にあって増大することから、平均消費性向は一定となる。
このような考え方を「ライフ・スタイル仮説」と言う。

経済を消費と所得、また所得の種類と短期所得、資産などの面から見るとこうしたことが分かってくるのだが、ケインズ、フリードマン、モジリアーニ、この3人が統一して指摘している点は、長期的マクロ経済に措ける消費と所得の比例関係であり、つまりは国民の暮らしはそれほど景気が良くなくても、逆に大変な好況でも、それは短期的な傾向であり、人一人の生涯を通して見れば、消費は所得に左右され、しかも人間の一生をトータルすれば、普遍性が有ると言うことである。

                                                     「国債と増税・2」に続く。