2019/05/27 05:13

2011年10月5日、18時58分から19時07分前後、長野県北部から富山県東部にかけて震度3前後の地震が数回発生し、細かな微動が同地域には続いていたが、こうしたことが起こってから直後、突然NHKのニュースの中で「緊急地震速報」が発表され、長野県には大きな地震が発生するから注意するようアナウンスが入る。
しかしいつまで経っても一向に大きな地震は発生せず、暫くして長野県北部で震度1の地震が発生して終わってしまった。

これは実は大失態なのだが、同じ事は日本海溝地震の後、福島県でも発生していて、この時も大きな地震が来ると発表されていながら、震度3程度の地震が発生して終わっていて、これらの誤発表の原因は気象庁コンピューターの判定アルゴリズムの不完全性に由来している。

つまり近い地域で3つ以上の小さな地震が発生した場合、気象庁の判定アルゴリズムはそれを巨大地震と捉えるようになっていて、このことは地震が起きる確率50%、起きない確率50%とするなら、起きない方を判定する事が出来ず、その反対にいつか大きな地震が発生するときは、それを反対側で判定してしまう可能性を持っている。

また常に大きな地震が来ると公共放送でニュースを止めてまで発表していながら、地震が来ないことが多くなれば基本的にはその信頼性は失われ、いわゆる「おおかみ少年」状態になって行く。
民衆は「ああ、また始まった。どうせあたりはしない」と思うようになり、緊急地震速報のそもそもの意義は失われて行き、そこへ大きな地震が発生した場合、緊急地震速報の精度の悪さが、その緊急性や非常性を失わせ、被害を拡大させる恐れすらある。

この意味で緊急地震速報は余りにも不完全であり、この制度の見直しは是非とも必要な事だと思うが、「出来ないものは出来ない」と言う責任感が必要であり、こうしたことを鑑みるなら、1995年に「地震の予知は難しい」とした地震火山予知連絡会の姿勢は、科学者の集団として真摯で責任のあるものだったと思う。

組織や自分の立場を考えるなら、専門家としてその専門分野のことが出来ないと言う事は大変勇気が必要な事だが、プロフェッショナルであるがゆえに、出来ないことは出来ない言う責任感がなければ、あらゆることに良い顔をしていると、その内国民に大きな損害を与えることが起きてくる。

1700年代のラプラスの悪魔に、気付かぬ間に心や責任を乗っ取られているのでは科学者や研究者としては失格であり、同じように現状から全てを推し量れると考え、それを信じて疑わない在り様の者は、その内いつか公の利益を大きく損なう存在となるやも知れない・・・。

※ 本文は2011年10月6日、yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。