「形の無い効果」・2 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2019/05/28 05:10

「癌の特効薬」に対して神経質になった医学会や薬学会は丸山ワクチンに対して過剰な反応を示し、1991年には同じ成分の「アンサー20」がゼリヤ新薬工業からも発売されるが、これもその承認内容は白血球減少の緩和作用、つまり放射線治療などで人体内の白血球が減少する「副作用」に対する治療薬とされたのであり、これによって同薬品の処方は「癌治療」ではなく、癌治療時の副作用反応に対する緩和薬とされたのであり、「アンサー20」が癌治療薬と認められれば、「丸山ワクチン」も同じように癌治療薬として認められるものと、道を求めていた多くの癌患者やその家族の請願は門前払いとなった。

それゆえ「丸山ワクチン」は1981年、当時の厚生省通達である、「有償治療薬」とされたままなのであり、これは癌治療薬としては認められないが、一定の規模で社会的要望を取り入れた形の大変中途半端な制度となっていて、その費用こそは40日分9000円程だが、片方で試験薬が無償である事を考えるなら、更には初期癌患者にも医療機関でも使用が可能なら、と言う思いが残る。

また丸山ワクチンによる癌の治療効果だが、一部にはこれまで35万人から40万人の癌患者に効果が有ったとする反面、多くの権威ある大学の医療機関や研究機関ではその効果は無いとされていて、では全ての大学研究機関が丸山ワクチンの効果を否定しているかと言えば、例えば日本医科大学の資料では、丸山ワクチンを使用した治療群と、他の抗癌剤のみの治療群の比較で、15%ほど丸山ワクチンを使用した治療群の方が延命率が高かったとされているように、丸山ワクチンを肯定的に捉えている研究機関もある。

同資料では、丸山ワクチンを1000人が使用したとして、その内152人に延命効果が有った事になる。
ただ、癌患者の「延命効果」だが、実はこれが大変難しい。
癌の症状はほぼどの患者も同じだが、同じ健康条件の人間、同じ生体条件の人間と言うものが存在し得ない。

またこうした延命効果は、そもそもが患者の「死」の時期を推定することから始まるが、幾ら医学に精通した医師と言え、多くの臨床結果が有るとは言え、人の「死」を推定できるなどとは考えない方が良いだろう。
ゆえに例えば5ヶ月の延命効果はそれが延命効果で有ったのか、その本人の生命力に有ったのかの判断は確証を得ない。

従って客観的に厳しい意見を言うなら、丸山ワクチンの効果はどこまで行っても不明なままかも知れない。
しかし私は、「丸山千里」博士がハンセン病患者には癌患者が少ないのではないかと感じた、その感覚にどこかでは惹かれるものがある。

確かに原因は違うところに有っても、その結果に措いて効果が有ると感じるなら、それもまた一つの医学的な考え方、生物に対する考え方と言うものではないだろうか。
冒頭でも説明したとおり、人間は何で生きているのかが分かっていないし、例え脳が死んでも体は生き続けることもある。
何をして死んだと言うのか、何をして生きていると言うのか、その本質は方法論や手続きではない。

頬を近づければそこから温かみを感じ、生きたいと涙を流す患者を前に、例え1秒でも彼女や彼等を生かしてやりたいと思う気持ちを前に、医学の謙虚な姿勢がまた、「感覚」で有ったとしても良いのではないか、そのようなことを思うのである。

稲刈りも終わり、重い袋を持ち続けた手は既に指が曲がったまま動き辛くなってしまったが、それでもこうして穏やかな秋の日差しの中に有れば、死んで行った母のことや、これからやりたい事が沢山有っただろうに若くして病に倒れ、世を去って行かざるを得なかった友のことを思いだす。そして、青い空に我が存在の無力なことを思う・・・。

本文は2011年10月10日、yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。