2019/06/03 04:51

一方この原理で行けば液体の液面より下では、外気圧と水圧が加算された圧力がかかり、これに相当する蒸気圧は液面よりも高くなる、つまり液体の液面よりは液体の下部の方が、より高い温度で無ければ沸騰しないことになるが、では液面付近が液体の下部より早く「沸点」に達するかと言えば、そうはならない。

液面付近では水圧が0に近いことから活発な蒸発が繰り返され、為に蒸発熱が奪われ、液体温度は低下している。
その片方で直接熱が加えられている液体底部では過熱状態が発生していて、水圧が高い状態でも液面よりは高温状態になる。
このため蒸気の気泡は液面付近から多く発生するのではなく、底部から多く発生するのであり、鍋にかけられた湯の中の気泡は下からより多く出てくる訳である。

また液体内部から発生する沸騰は、その容器の形状や液体の状態によっても変化してくる。
容器の器壁に多くの凹凸が有る場合、気泡の核となるものは、容器に付着している微細な気泡や液体内に溶解している気体であることから、凹凸の多い容器で熱を加えた場合の方が、凹凸の少ない滑らかな容器で熱を加えた場合より早く沸騰を起こし、同じ液体でも一度煮沸された液体は、煮沸されていない液体よりは遅く沸騰し、過熱の原理はこれに同じである。

つまり先に洗っていないガタガタの土鍋に市販されている水では無い水道水を直に入れれば、きれいに洗った滑らかな鍋で市販されている水で湯を沸かすよりは数秒早く湯が沸くと言う事である。

さて、今夜は沸騰と沸点の話だったが、理科の授業然とした感じで終わってしまうのは如何にも心苦しい。
それゆえ罪滅ぼしと言っては何だが、最後に同じ液体繋がりで、梅酒には何故「粉砂糖」より「氷砂糖」が良いのかを解説させて頂き、終わりにしたいと思う。

では良い夢にてお休み有れ・・・。

約40%のアルコール水溶液、簡単に言うと焼酎に氷砂糖を入れ、その中に梅の実を漬けておくと、最初は梅の実の内部濃度が高いことから、梅の実は瓶の底に沈み、この間に外部から大量のアルコールが入って来て、梅の実は膨張する。

そして梅の実に入ってきたアルコールに梅の風味や香りが充分溶解した頃、アルコール水溶液(焼酎)の中では氷砂糖がゆっくり溶け出してきて、濃度の濃い糖質のアルコール溶液となっていて、今度は風味や香りが充分溶け込んだアルコールが、梅の実の内部から外部の糖質アルコール液へと出ていく。

やがてこうして熟成されたアルコールが梅の実内部から焼酎液中に放出されると、梅の実は少し縮んで比重を失い、焼酎溶液の上の方に浮かび、大変まろやかな梅酒が出来上がるのである。

だが焼酎に大体同じだろうと思って「粉砂糖」を入れるとどうなるかと言えば、梅の実の水分は濃度の高い砂糖溶液を希釈しようとして急速に外部に出てしまい、早い間に縮んでしまう。
この事から結果としてアルコールが梅の実に入って行くことができなくなり、梅の風味や香りのない唯の「甘い焼酎」になってしまうのである。

梅酒に使う「氷砂糖」はその溶解に要する時間にポイントがあり、なおかつ梅の実と糖質アルコールが順序よく濃度変化を起こすことで熟成している。

僅かなことだから「まあ良いだろう」と言う事では、大失敗に繋がる事が世の中には時々ある、
くれぐれも気を付けたいものだ・・・。