「環境性決定」 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2019/07/12 22:08

この宇宙でプラスとマイナスを考えるなら、通常はプラスの性質のものとマイナスの性質のものが同じ数だけ存在し、それでプラスマイナス0と言う考え方をしてしまうが、果たしてそれは正しいだろうか、コインを投げた時表が出る確率と裏が出る確率は等しく考えてしまうが、その根拠はどこに有るだろうか。

私たちが「偶然」や「自然」と考える数値は殆どが「等価数値」であり、基本的には左右が均衡した形をしていることを本質としてそれを疑う事は無いが、私たちが存在するこの宇宙はどの部分も「非等価数値」であり、この「非等価数値」が全体では「等価数値」を形成しているものの、「等価数値」が存在している「場」は、もしかしたら一箇所も有り得ないのかも知れない。

従って例えば人間が生まれてくる時、男女がほぼ同じ比率で生まれて来る事を「ランダム数値」と考える人は多いが、コインの裏表と同じように「偶然」や「自然」が二極等価である事は「自然」や「偶然」ではなく、ある種の特殊性を持っていると考えるべきかも知れない。

キイロショウジョウバエの体細胞を見てみると、オスメス共通の染色体と、オスとメスでは組み合わせの違う染色体があり、前者を「常染色体」と言い、後者を「性染色体」と呼ぶが、キイロショウジョウバエの体細胞が持つ8本の染色体の内6本は3対の相同染色体、つまり「常染色体」だが、メスの場合は他の2本の染色体が同じ形で、オスは残り2本の染色体の形が異なっている。

このように「性染色体」の形が同じものを「ホモ型」、オスの場合に見られるような「性染色体」の形が異なるもので形成されているものを「ヘテロ型」と言い、オスとメスで共通して見られる性染色体を「X染色体」、オスにしか見られない性染色体を「Y染色体」と言うが、生物によってはこの「Y染色体」が無いものも存在する。

通常メスの「ホモ型」は同じ染色体の「XX型」、オスは異なる染色体の組み合わせで「XY型」となるが、この組み合わせで配偶子が出来るとき、メスは「X」染色体のみの卵を形成し、オスの精子では「X型」と「Y型」が形成され、メスの卵がオスの「X精子」と結合した場合、その配偶子はメスになり、卵が「Y精子」と結合するとその配偶子はオスになる。

そしてこうした形の「性決定」様式をオスへテロの「XY型」と言い、同じ様式でも「Y染色体」が無い場合は「X0型」と呼び、生物の中ではメスが異なる染色体を持つ、つまりメスが「ヘテロ型」の染色体を持ち、オスが同じ染色体の組み合わせの「ホモ型」である場合には、オスメス共通の染色体を「Z」、メスにしか見られない染色体を「W」で表し、「ZW型」と「Z0型」の2種の形が発生してくる。

ちなみに何故人間の場合男女がほぼ同数で生まれてくるかと言えば、「XY」染色体を持つオスの精子の内訳が、「X精子」「Y精子」それぞれ1対1の割合で形成されるからであり、それらが同じ確率で受精する事から、そこから生まれてくる配偶子のオスメスの出生比率も理論上は等価になるのである。

また我々人類ではこうして個体の性決定が遺伝子の組み合わせで為されるが、例えばイソギンチャクと共生する「クマノミ」などは小さいときはオスとして育ち、やがて大きなメスとつがいになり、メスが死ぬと自身がメスへと性転換し、小さなオスとつがいを形成する。

このような形の性決定を「環境性決定」と言うが、1966年、西アフリカで調査されたトカゲで始めて発見された「環境性決定」は更に興味深いものだった。
何と卵が孵化するときの温度によってオスメスの出生が決まってくると言うものだが、その後の調査でワニ、カメ、トカゲなどの多くの爬虫類でこの「温度性決定」が見られたのである。

だが同じ爬虫類でも「ヘビ」にはこうした性決定が見られない。
何故同じ爬虫類なのにヘビは違うのか、また調査された爬虫類でもワニはほぼ全ての個体が「温度性決定」だったが、他のカメやトカゲは全てと言う訳ではなかった。
この事は何を意味しているのだろうか、どこかで「環境性決定」には生物と環境がまるで語り合っているような部分が存在しているような、そんな感じがする。

もし人間の男女の性染色体がそれぞれ「XY」で構成されていたら、おそらく男女の出生比率は偏って行くのでは無いだろうか。
メスの「XX」にオスの「XY」、この組み合わせは、実に地球とその周辺に存在している「等価対比」に適合したものだったのではないだろうか。

そしてこの宇宙では偶然や自然が「等価対比」ではなく、等価対比が特殊な偏りであったとしたなら、我々人類もまた広義では「環境性決定」の中で子孫を育んできたのかも知れない・・・。