「ガラスの金継ぎ」 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2019/07/16 07:52

ガラスはいずれ流体になると予想される固体だが、これの漆での金継ぎは不可能であり、親和性のある物質、プライマーなどの混入や表面塗布を行っても、破断面に漆が使われる以上、時間経過と共に収縮する漆とガラス破断面の剥離は避けられない。

 

長くて1年、早ければ2ヶ月後には破断面と漆が接着強度を失う。

為に接着剤で接合し、その上からプライマーを縫り、漆で上から金を蒔くと言う方法が使われる場合でも、今度はプライマーと漆の部分が剥離してくる。

簡単に言えば、漆で線を描いてもいずれ部分欠損が出ると言う事である。

 

またガラスには厚みが有り、しかも透明な為破断面が横から見える事に鑑みるなら、破断面が漆の乾燥色である茶色、と言うのも見た目の優雅さが無い。

 

それゆえガラスの金継ぎは基本的に料金を頂いて引き受けてはならないのだが、自分が使う、或いは観賞用でも良い、どうしても修理したいと言う場合は、ガラス専用の接着剤を使い接合する。

 

ただしこの場合でも破断面が横から見えると言う現実は、漆も接着剤も同じである事から、破断面を美しく見せる工夫が必要となり、接着剤に添加物を加えてこれを綺麗に見せる事になる。

 

用意するものはガラス専用接着剤、出来れば乾燥速度が20秒~40秒以上のものが望ましいが、これに金の粉を混入して接着すると、破断面が既に金色だから、ただ接着したより遥かに優雅さを持つ事になり、こうして金粉を混入する為に接着剤の乾燥速度が遅いものが望まれる訳である。

 

必要なくなった菓子箱の蓋でも良いが、ここに接着剤を適量「破断面積に応じて目測で量を判断する)出し、そこへ金粉を混入するのだが、本金を使用するとかなり膨大な量が必要になり、費用対効果が大きく矛盾する為、印刷用の蒸着合成金を使用する。

 

一般的にはLG粉と呼ばれるものだが、ネットでも良いからこれを入手(金額は100gでも1000円以内)し、接着剤に混ぜる。

分量は接着剤9に対してLG粉1くらいを限度とし、これを超えると接着強度の98%を下回る事になるので注意が必要である。

 

接着剤と金粉を木製のアイスクリームの匙などで攪拌(かくはん・混ぜ合わせる事)したら、手早く別の匙を使ってガラス破断面の両側に塗り、手で揉む様にして押さえ、それを一番大きな破片を下にして、何かに立てかけて24時間は触ってはならない。

 

接着剤の強度は瞬間接着剤でも完全乾燥には気温22度以上で18時間以上を要する。

必要最低限の乾燥速度が瞬間なのであって、完全乾燥とこれは別の話なのである。

 

ましてや初期接着時間が20秒~40秒の接着剤となると、最低24時間は置いておかなければ完全乾燥には至らない。

 

こうして金を入れて接合すると、横から見える破断面が金色で、さらに、はみ出した接着剤の中にも金が入っているので、岩状金継ぎ(ダイナミックな金の盛り上がりがある金継ぎ)と同じような金線を引いた仕上がりに見える。

 

接着剤は均等にはみ出ないし、その盛り上がりも一定ではないが、これが深さと風情を醸し出す金継ぎ技法と同じ仕上がりになる訳で、この場合の金の色はラメ入りなどの派手なものより、若干くすんだ金泥色だとさらに素晴らしい。

 

金泥の作り方は3gLG粉の場合、黄色の粉を0・3g、灰墨(カーボン粉)を0・1gくらいを基準に調整する。

黄色の粉はカーボン粉を反映させる為のものであり、カーボンはくれぐれも入れ過ぎないように注意する。

 

金泥の配色は物に重みを加えるので、接合したガラスは若干古式ゆかしい感じに仕上がり、これから夏を迎える季節にはガラスの透明感、それにどこかで重く雅な金の配色はとても相性が良いかも知れない。

 

これが破片3枚までの接合の仕方だが、破片が4枚以上の場合、接着剤を使用するので粘土の型は使えない。

最初は一番大きな破片同士を接合し、後は1枚々々そこへ接合する以外に方法が無く、この場合はその都度完全乾燥後に接合して行き、最後に一番小さな破片が残った段階で、この破片が必ず入らなくなるから、断面を紙やすりなどで削って調整する。

 

基本的にこうした方法でも最後は必ず段差が残るが、この接合面に金のはみ出しが来る為、若干目立たない事になり、こうした状況が細かく割れたガラス金継ぎの限度になる。

 

ちなみに金継ぎしたガラスは「真」に対して「草」にも「行」にも該当しない。

それ以外の外の世界になるので、自分や家族が使う、または観賞用として用い、来客などに使用することは出来ない。

来客で使用できる場合は、それが要望である事、事前に了解が取られている事を条件とする。