2019/08/31 06:51



それゆえここで言える事は、もはや石油エネルギーの支配で国際社会を支配することはできないのであって、また支配できるシステムも存在していない事であり、ここを支配した国家が世界を牛耳ると言う理論は既に幻想でしかないが、未だに「石油を支配する者は世界を征す」の考え方が一般庶民はもとより政治の世界でも主的な考え方になっている点は、極めて時代遅れとしか言いようが無い。

石油の価格決定権はメジャーやOPECを経過し、1980年以降はニューヨークの先物取引市場に移行している。
つまりもう誰も独占してそれをコントロールする事ができなくなっているのであり、そのことが石油価格の不安定化を招いているが、一方で完全に自由化されていると言うことなのである。

現在発生しては沈静化している石油価格高騰は、決して産出石油量の絶対量不足ではなく、むしろ幽霊を恐れて逃げているようなものであり、その幽霊とは中国の石油消費に対する恐れ、また世界的な金融不安から来る国際資本の石油避難、また情報の高速化によってローカルな地域での政治的な理由による、部分的石油不足が全体の漠然とした恐れを生む傾向を指すが、この事を学識経験者や政治家が全く理解していない。

こうした幽霊は決して実態の石油不足を反映していないのだが、第一次世界大戦当時の歴史的背景が現在に至っても考えられ、中国などがアフリカや中東に見せる資源調達外交に、中東を囲い込む対抗措置を考えるアメリカの政治姿勢などは、双方共にまさに「何を考えているのか」と思わざるを得ない。
市場の独占は不可能だし、石油は金を出せば買える。
大切なのは石油を買えるだけの経済力の発展であり、ここで石油市場の独占を考える方も、またそれを阻止しようとする方も、現実を全く分かっていない。

中国はスーダンやベネズエラと言った、アメリカが快しとしていない国家で資源外交を積極化し、政治的に石油確保に動き、この事をして水面下ではアメリカ、中国両国の関係が緊張化しているが、こうして石油消費国による政治的な動きが発生すると、そこから石油産出国の資源ナショナリズムが発生する。

中国の時代遅れの発想によって国際石油市場機構が脅威にさらされるのではないか、そんな漠然とした恐れが国際的な反動の連鎖を引き起こし、資源ナショナリズムが発生すると、資源開発投資が圧力を受け進行しなくなる。
いわば幽霊を恐れてすくんでしまった状態が起こる訳で、このことが更なる石油不足に対する過剰な不安を市場に与えると、石油価格の高騰は中々おさまらない、若しくは上がるときは大きく、下がるときは小さくの状態で、結果的に価格が高騰していく現象を引き起こす。

中東を囲い込んだところで、また地理上の国家を幾ら集めようと、石油市場を独占することはできない。
今や石油資本は完全に「価格」でしか動かない事を理解しない各国の政治姿勢は、やがてその行動をしている国家自体の首を絞める事にしかならず、漠然とした根拠のない恐れが現実に庶民生活に影響を与えるとしたら、過剰な恐れや未来に予想される謂れなき恐れによって今を支配されている事はまことに不利益なことである。

ものが必要なだけ手に入っているのに、いつかなくなるのではないか、まだ欲しい、もっと欲しいと思う、まさしく餓鬼の領域と言うものだ・・・。

本文は2012年、yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。