2019/10/22 18:03



食品が時間経過と共に起こす変化は2つ有る。
その内の一つは「腐敗」であり、これは微生物の繁殖に伴い、人間により先に微生物によってその食品が食べられてしまったと考えても良いが、その一方こうした微生物の繁殖が存在しても、人体に有益に働く微生物が繁殖する場合を「発酵」、人体に有害な作用をもたらす微生物の繁殖を「腐敗」と区別する。
だが微生物による有機物の分解作用と言う事では両者は同じものである。

そして食品が変化する要因のもう一つは「酸化」である。
自然界に存在する物質及び生物は全て酸素によって変質させられるが、こちらは食品の香りや色、風味などを奪ってしまう事から、人体に取って有害な作用を起こす場合の「腐敗」と「酸化」、つまりは微生物の繁殖と酸化作用を防止すれば食中毒は回避できる。

これらの観点から、その食品の製造加工過程で腐敗や酸化を防止する方法として、添加物を加えて安定させる方法が考えられたが、この添加物も天然物を利用した「天然添加物」と科学合成によって作られた「合成添加物」があり、日本の食品衛生法は「合成添加物」の利用品目と、その食品に対する添加濃度の最高濃度上限を規定しているが、「天然添加物」には濃度上限規定を設けてはおらず、両添加物には使用項目表示義務がある。

「合成添加物」は6種あり、「保存料」「殺菌剤」「酸化防止剤」「発色剤」「増粘剤」「着色料」に大別されるが、保存料は腐敗を発生させる微生物の繁殖を抑制する物質であり、ここに殺菌作用は含有されていないことから、別名「防腐剤」とも言われ、次のような物質が使われている。

一般的に「不飽和脂肪酸」には静菌作用が有ることから、細菌、カビなどの繁殖を防止する物質として、毒性が非常に低い「ソルビン酸」などが有効だが、食品に添加するものとしては「カリウム塩」などが多く使用されていて、酸性保存料で有る事から、リンゴ酸、クエン酸などと併用してPHを低くすれば更に効果は大きくなり、この他塩基性のもので効果を期待するなら、「パラオキシ安息香酸エステル」、柑橘類の防カビ剤としては、「オルトフェニルフェノール」などが使われている。

また殺菌剤として汎用性があるのは「過酸化水素」だが、これは強力な酸化作用が有ることから、「漂白剤」としての効果も有り、例えば「茹で麺」や「蒲鉾」などに使われていて、逆に食品の酸化を防ぐ「酸化防止剤」では水溶性のビタミンC、ビタミンEなどが使われているが、酸化防止剤の基本対象は油脂類である。

油脂類は酸素、高温、金属触媒などによって分解され易く、この事を「油脂の酸敗」と言い、ここで生成される物質は毒性の高いものや悪臭を放つものが多くなる。
それゆえ食品の酸化防止剤はこの油脂類に効果のあるものを基本として、他の食品にも酸化防止剤として汎用されているが、ビタミンCE以外でもビタミンCの立体異性体である「エリソルビン酸」なども比較的安価なことから、「ナトリウム塩」として広く使われている。
ちなみにビタミンEの抗酸化力は比較的低いが、その毒性の低さから加工食品添加物としては一番汎用性を持っている。

発色剤と着色料の差は、その剤に色が有るか否かの定義で分類され、着色料には天然着色料と合成着色料の大別が有るが、この合成着色料の内、塩基性の色素は発がん性と肝機能障害の恐れが有ることから全て使用が禁止されていて、現在使われている着色料は全て酸性色素、しかも11種類しか使用が認められていない。

発色剤は食品自体が持つ色素を安定させる剤で、これ自体は無色透明であり、主なものとしては肉類の赤みを新鮮な赤色に保持する「亜硝酸ナトリウム」などが有るが、亜硝酸と肉の自己分解から生じた第二級アミンが反応すると、発がん性物質N-ニトロソアミンが生成される場合がある。

同じく肉類の粘着力を高める物質として「増粘剤」が有るが、ここで使用される「ポリリン酸塩」は沢山の水素結合を形成する事から、タンパク質の弾力性を向上させ保水性を高めるが、基本的にリン酸塩は多く摂取すると、体内のカルシウムイオンを失わせてしまう事から、その摂取については「亜硝酸ナトリウム」同様、注意を要する。