2020/03/27 06:19
ところで今日は私の住んでいるところは、朝から雷が鳴り響き冷たい雨が降っているが、何故か急に初めて自分の車を買った時の事を思い出した。
丁度こんな季節だったか、それまで乗っていた叔父さんから貰ったスバルの軽四が壊れ、仕方なく買ったシビックに乗り換えて間もないころ、晩飯代わりにパンを買おうと思って入った町の小さな雑貨屋で、私はまだ生まれて間もない子供を抱いた若い母親から、出て行き際に声をかけられた。
「済みませんが、お忙しいですか」
私と大して年が違わない母親は申し訳なさそうに訪ねたが、そんなに緊急なこともなかった私は「いえ、後は家に帰るだけですから」と答えた。
するとその母親はは更に申し訳なさそうな顔で、「すみませんが、お金は払いますから家まで送ってもらえませんか」と私に尋ねたのだった。
店の前で車を止めて降りてきている訳だから、私が車に乗ってきている事は分かっているだろうし、おまけに外は冷たい雨で、おそらく5時30分は過ぎていただろう、辺りは完全に暗くなっていた。
「ああ、いいですよ」と私は答えてパンの入った袋を持って、その母親を後部座席に乗せた。
母親の家は商店街から1km程も離れたところだったか、指示どおり運転して5分もかからないところに有ったが、彼女は家に着くとまず子供を中にいた、おそらく子供にしたら祖母になるのだろうか、その人に渡すと、既に帰ろうとギアを入れていた私のところまで戻って来て、何度も有難うと言い、財布から1000円札を取り出して私に差し出した。
「お金はいいですから、それにタクシーでは無いので・・・」
私はそう答えたが、母親はどうしても受け取って欲しいと言って聞かなかった。
1000円札の上にパラパラ雨が振ってきて、あっと言う間にそれはしおれて行った。
その様を見て、母親もまた傘も差していなかった事から、私は「じゃ、遠慮なく」と言って金を受け取り、家路についた。
そう言えばあの1000円は何に使ったのだろう・・・。
物質の話を書いていながらどうしてこんな事を急に強く思い出すのか自分でも分からないが、それほど大した事でもなく、既に母親の顔すら思い出せないのに、何故か雨に濡れていく1000円札だけしっかり記憶に残っている。
Me voy a mudar, y la destrucción y la creación..
「創り、壊し、そして動いている」