西アフリカの神話の中に「虹」を「蛇」とするものが有るが、オーストラリア先住民族「アポリジニー」の伝説でも「虹」は「蛇」と言う表現が見られ、中国でも「虫」と言う文字が当てられた経緯を見るなら、やはり「虹」は「蛇」と概念されていた事が見て取れる。
多くの伝説や神話ではやはり気候、雨と水の支配者と言う形が採られているが、アフリカ発祥の伝説では生物創生に関わる重要な位置を占めている。
後年「虹」と「虹蛇」(こうだ)は分離して考えられ、一般的には「環水平アーク」を「虹蛇」として、分離して考えるようになって行ったものと考えられるが、古代の概念は元々「虹」と「環水平アーク」、それに「瑞雲」(ずいうん)や「ハロー現象」も含めて、あらゆる虹色のものを総称して、「蛇」と言う形状を想像したものとも考えられる。
唯、虹色と言う現象はそう毎日見られるものではなかった事から特殊性を持ち、その中でも「環水平アーク」や「瑞雲」「ハロー現象」は、決して天地がひっくり返るほど珍しいものではなかったが、「虹」よりはさらに特殊性が有る事から、吉祥と凶を包括した概念が持たれるようになった。
凶の本来は「揃う」事で有り、これは一部の隙も無い整然とした「場」、過ぎたる静寂を指すもので、吉祥とは表裏一体のものと考えられてきた。
それゆえ人知では遠く及ばぬ美しさ、特殊性もまた吉祥と凶を包括し、「環水平アーク」や「瑞雲」「ハロー現象」は天変地異、大地震とも関連付けられてきた経緯がある。
「環水平アーク」「瑞雲」「ハロー現象」は共に太陽光と水蒸気、雲との角度に拠る虹色の反射光の事で、「ハロー現象」は太陽の周りに虹の輪ができる現象を指し、これの角度が異なって輪が広がり、その一部が水平状態で見えるものを「環水平アーク」と言い、基本的には同じものだ。
また「瑞雲」は、雲に太陽光の角度の加減で虹色の光を写すもので、これらは共に月の光でも現れる場合が有り、「虹蛇」はこの内の直線に近い状態の虹を指す。
「環水平アーク」の一部と「瑞雲」の一部を指しているが、古代中国の伝承に拠る地震との関連性は「遠隔地」である。
つまり「虹蛇」はそれが見られた地点から遠く離れた地点で発生する、大きな地震と言う伝承が最も多い。
その単位はおそらく500㎞、1000㎞と言う単位で有り、過去日本で「虹蛇」が確認されて中国で大きな地震が発生した事例は、1977年年以降で3回と言うものである。
これだけを見るなら100%だが、そもそもの事例の少なさが、統計的精度を怪しくさせている。
2020年6月26日10時頃、関東地方ではこの「環水平アーク」と「瑞雲」が広い地域で確認され、これに伴い大きな地震と関連付けた見方も為されたが、一つだけ間違った記事を掲載しているケースが有ったので、これを訂正しておく。
2020年6月26日19時09分配信、Yahooニュースの「ねとらぼ」の記事で、「環水平アーク」と地震が関連付けられるのは「椋平虹」(むくひらにじ)の伝承があるからだとされる記事は訂正を要する。
そもそも「椋平虹」を知る者は一般的に少なく、「環水平アーク」と地震を関連付けされる動機は、人間の「凶」に対する本能で有り、「環水平アーク」と「椋平虹」は同義ではない。
「椋平虹」は彼の自宅から見える虹の形に拠る予知で有り、全ての形が全ての予知に拠って異なるもので、海外へ椋平氏を紹介した気象学者の「藤原咲平」教授ですら、何度話を聞いても理解できるものではなかった。
また、後年その予知したとされるケースには多くの疑義が発生し、椋平氏の名前は消えて行った経緯を持つ。
これを紹介した戦後以降の書籍は2冊、亀井義次」著「地震予知10年の歩み」(絶版)と、2007年に発刊された「晴れた日に恐れよ」(絶版)の2冊だけであり、これ以外に詳細を説明した書籍は存在していない。
このような特殊な事例と「環水平アーク」を関連付ける根拠には大きな疑問が残る。
「環水平アーク」と「椋平虹」は同じものを指していないし、そもそも一般の人が「環水平アーク」と「椋平虹」を関連付ける可能性は皆無と言っても良い。
これを一般論のように記載するは、社会に「誤認」を拡散するものと言える。
「環水平アーク」「瑞雲」の一部は、共に遠隔地の大地震と言うのが伝承で有り、「椋平虹」は「環水平アーク」ではなく、「虹」の観測を指している。