2020/10/04 07:48

自身も関東大震災を目の当たりにした「魚と地震」の著者「末広恭雄」氏が生前、談話の形で大震災前に横浜付近の川を遡る大量のイワシの群れの話しをされていて、「あのような事は初めてだった、以後同じ事が有ったらそれは地震が来るかも知れない」と言う言葉を残している。
 
また1896年6月15日に発生した「三陸津波地震」のおり、前々日から宮古湾内の随所に大量のウナギが打ち上げられ、そこにいた人全員が、唯歩くだけで200匹余りのウナギを拾った記録が残っていて、この近海ではちぎれた海草が大量に海を覆っていたと言われている。
 
昭和14年(1939年)5月1日に発生した男鹿半島地震、ここでは普段は取れた事のないタコが、前日から何故かフラフラと陸へ上がってくるのが目撃されたと言う話が、「武者金吉」博士の「地震なまず」と言う著書中に記載されている。
 
1854年12月24日に発生した安政南海地震、ここではもっぱら地震が発生する前に怪光現象を目撃したと言う記録が著名だが、その一方漁師やその子供達の話として、大きなエビやタイが海岸に生きたまま多数打ち上げられていたと言う記録も残っていて、晩年その地震予知に不正が有ったとして社会的に抹殺された京都の地震研究家、「椋平広吉」氏も1927年3月7日に発生した北丹後地震の予知に関して、地元漁師が海岸に大きなエビが打ち上がってきたと不思議がっているのを知り、地震が来ると確信するのである。
 
更に1993年7月12日に発生した「北海道南西沖地震」、ここでもいつもの年なら7月には余り漁が無いヒラメが、例年の10倍20倍と言う大漁になり、漁師達が首を傾げていて、やはり1923年の関東大震災の記録では地震発生当日の早朝、漁師達が海上に浮かぶ膨大な数のタラの一種の死骸を発見していた。
 
これ以外でも1707年10月28日に発生した宝永地震、1855年11月11日に発生した安政江戸地震でも、記録や伝承の片隅に必ず伊勢エビやタイが海岸に打ち上げられる記述が出てくるのであり、時にはアワビまでもが、死んで打ちあがって来た事が記録に残っている。
 
リュウグウノツカイなどの深海魚が上がってくる記録も然ることながら、大きな地震が発生する前には普通の魚達も少なからず異常行動をしていて、中でもイワシの大量遡上や、フグの一種であるハリセンボンの大量死などは、日本地震史の記録のなかで繰り返し出てくる前兆現象である。
 
唯こうした魚が打ち上げられる現象と地震の因果関係に付いて、現代科学、魚類生物学の世界では海が荒れる事によって魚が打ち上げられる、或いは水温の変化や天敵に追われて逃げている間に打ちあがってしまうと言う見解をするが、本来ずっと海で生息している海の生物がそれほど安易に低気圧にやられ、天敵に追われたとは言え、海が浅くなる陸側へ逃げるかと言う確率的疑問が有り、大きな魚よりはより水深の浅いところへ逃げられる小さな魚が、陸まで上がるその原因の解決とはなっていないように思える。
 
またハリセンボンなどは鋭い突起で防御が可能であり、これが何千何万と言う単位で海岸に打ち上げられる事が、本当に自然界で良く有る現象と言えるのかどうか、その打ち上げられる現象の後に大きな地震が発生しているケースが相当数見られる事は、例えシケや天敵に追われたと言う理由が有るにしても、偶然の一致だとしても、確率的に高いもので有れば、理由を問わずして警戒するを怠って良いとは言えないのではないか・・・。
 
北海道「胆震地方」(いぶり地方)の鵡川(むかわ)では11月3日、同じく北海道「日高地方」の浦河町では11月6日に、体長20cm前後のイワシが大量に死んで打ち上がっているのが発見された。
 
地元漁師もこうした現象は初めてだと証言しているが、ここにシケや海流異変、水温変化などの理由を探すよりも、過去こうした場合他の地域では何が有ったか、どう言う事が起こった時が有ったかを、まず警戒すべきではないか。
 
胆振地方は元々地震が多い地域だが、それでも過去こうした魚の異常が無かった事を考えるなら、これまで以上の何かが有る事をまず考える必要が有るかも知れない。
 
同地方には、イワシの異常が発見された5時間後にM4・6の地震が発生しているが、これだけを取れば胆振地方に発生した地震によって、何らかの影響を受けたイワシが死んで打ちあがったと解釈する事も出来る。
 
しかしそれから3日も経過した11月6日、今度は日高地方の浦河で大量のイワシが打ち上げられたとなれば、何かがまだ終わっていないか、それとも地震との因果関係は全く無いかのどちらかになる。 
 
深海魚を除く魚の異常行動と地震発生までの統計的因果関係では、長いもので118時間程である。
 
そして魚の異常は海域か、若しくは海に近い火山地域の地震の確率が有り、不用意に恐怖心を抱く必要は無いが、少なくとも今後胆振、日高の両地方の方々は更なる異常に注意し、少なくとも4日間は普段より警戒しながら、お過ごし頂ければと思う。
 
何も無ければそれに越したことは無いが、何か有った時、人の命が失われた時など、どうして先に言って置かなかったのかと、それを私は悔やむ事になる。
 
ゆえ、後にやま師、嘘つき、大たわけと蔑まれる事を覚悟の上で、このような話しを申し上げてしまう次第である。


※ 本文は2014年11月6日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています。