2020/10/09 18:10

消費税10%の追加増税の判断基準となっていた7月から9月期の実質GDP(国内総生産)は、既に8月の段階からマイナスが予想されていたが、蓋を開けてみればマイナス0・4で、12ヶ月に換算すると実質1・6%の、予想を遥かに超えるマイナス成長だった。
 
安倍政権が心血を注いだ経済政策「アベノミクス」は「インフレ税」の記事にも出て来たとおり、インフレーションに拠る物価上昇や、公費負担増に実質の国民所得が追い付かず、結果として国民の購買力を押し下げてしまったと言う事である。
 
インフレーションの本質が政府に利益が集まるところに有る以上、これ以上の利益を国民に付与しなければ購買力が低下することは目に見えている。
この部分を紙幣増刷のインフレーションと言う「理論」に頼った政策が破綻するのは初めから解っていたことだが、問題はこれから以後の安倍政権の政策である。
今の状態で国債の買取と言う金融緩和を続けて行けば、やがて財政再建と言う経済の基本的原則が担保されず、円は信用を失う。しかし7月から9月期のGDPの落ち込みを見る限りでは、消費税10%の追加増税は更なる景気の落ち込みを確実なものとしてしまう。
そしてここで700億円も使って国会を解散し総選挙に持ち込んだとしても、一体国民は安倍政権の何を信任すれば良いのだろうか。
アベノミクスは失敗だった事を信任して、では安倍政権、自民党が新しい経済対策の概要を発表せずに総選挙で勝利した場合、安倍政権の政策方向が全く見えていない。
 
唯ドボドボと円をばら撒いていたのでは、いずれ日本国債の金利は上昇し、あらゆる手を使って国民の貯蓄を収奪した上に、インフレーションで最後の一滴まで国民の資産を搾り取ったのだから、これ以上円を増刷して行くと、円は間違いなく暴落するか、市場に通貨は溢れても需要が追い付かず、通貨のデフレーションを起こすかも知れない。
 
また高々2%くらいの消費税を上げたところで、初めから財政再建など困難だったのだが、これも実行出来なければ対外的な信用面でのダメージは計り知れない。
つまりこのまま失敗したアベノミクスを信任する場合、国民は必ずやってくる円の暴落と国債の暴落、生活必需品の物価は高騰し、それ以外は物が売れない状態、スタグレーション状態に追い込まれ、公費負担は更に加速していく事から、壊滅的な下降経済に追い込まれていく。
 
4月の消費税増税以後、8月になっても消費の最前線である外食産業の売り上げが回復していなかった。
 
これらは一見各外食産業の事情だと考えられていたが、実体は消費そのものの落ち込みで有る事を解っていながら、民間の経済研究所、シンクタンクなどは軒並み年2%台のGDP上昇を謳っていた。
 
これでは経済の専門家、経済専門の研究機関など詐欺師と同じようなものである。
今すぐ経済の専門家や研究機関と言う看板を下ろし、頭を丸めて国民に謝罪すべきところだと思う。
 
インフレーションでコントロールできる経済の範囲は広いが、薄い範囲に留めておかないと毒薬になる。
これを切羽詰ったところで気付け代わりに使った場合、その後の対処が無いと気絶した人が目を醒ました瞬間死んでしまう事になる。
 
例えば国家予算などは一度増額されると、未来永劫国民は増加分を負担しなければならなくなり、国家公務員が一人増えれば、その一人分の給与支出は国家が存続する限り減少しないが、片方で国民の人口動態が高齢化すると、国民一人当たりの生産額は減少し、その上に負担額は実質増額となる。
 
この意味から国家公務員、地方公務員、国会議員、地方議会議員など、国民の税金で給与が為されている者の増加、歳費の増加は遠い未来までに及ぶ国民の拘束された支出となり、しかも経済が落ち込めば、その負担割合の体感温度は2倍にも3倍にも感じる事になる。
 
一方一人でも公務員や国会議員が減少すれば、その分が未来永劫に渡って国民の可処分所得に組み入れられる。
つまりは公務員や議員が減少すればするほど国民は未来に渡って利益を得る事になり、経済の原則は利益を得る事ともう一つ、支出を抑える事である。
 
100万円稼いでいても、毎月105万円使っていたのでは借金地獄になるが、月に10万円しか稼げなくても5万円しか使わなければ、毎月5万円の貯蓄をする事が出来る。
 
日本の場合、最低でも人口減少率に見合った国家公務員、地方公務員、国会議員と地方議会議員の削減率が必要であり、最も確実なのは労働力人口に比例した人数とする場合で、アベノミクスと言う経済政策が実質4月から6ヶ月に渡って国内総生産を押し下げた結果を鑑みるなら、次に取れる政策はこれ以外に無い。
 
だが仮に今回実質GDPのマイナス成長の結果から、消費税を追加増税しない事だけを争点に解散総選挙が行われ、消費税を上げない事で国民の信を問うとした場合、日本経済はこうした消費税2%くらいの事で初めから改善など無かったのだから、安倍政権は全く意味の無いところで国民の信を問い、金融緩和を続けるなら、間違いなく日本経済の先行きは不安定化する。
 
日本国民はこれから冬を迎え、一層寒さが身にしみる事になるだろう。
今のうちに少しでも備えるしかない・・・。
 
ルネサンス期のイタリアで存在した考え方がフランス語で残された、こんな言葉がある。
「raison D`Etat」(レーゾン・デ・タ)、訳すなら「国家的な理性」とでも言おうか・・・。
都市国家の存在を至上として、国家の存続、強化を図るための法律、行動基準の事だが、
ここで語られた高邁な理念の現実は、結局国家を運営する特権者の利益至上にしかなっていなかった。
 
国家の利益、国益とはいつの時代も特権者の利益となり、国民主権が謳われながら、国民は理想とは相反する国家の利益と衝突せざるを得ないのである・・・・。

 

 

[※ 本文は2014年11月17日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]