2020/11/19 21:19

一般的に「関東地震」「江戸地震」と言うと、東京を中心に考え易いですが、元禄地震(1703年)は千葉県野島崎付近が震源であり、1923年の「関東大震災」は横浜が震源となっています。

 

安政江戸地震(1855年)は震源が東京湾と言う説と、千葉県北西部を震源とする説が在りますが、付近の振動分布記録に鑑みるなら千葉県北西部を震源と推定すれば、より多くの整合性が得られます。

 

つまり関東地震と言っても、大きな地震の震源は東京では無いのであり、千葉県や横浜が震源となるケースが多い事から、激しい前兆現象が現れる場合、それが千葉県だから神奈川県だから、と言う考え方は避けた方が良いでしょう。

 

むしろ千葉県や神奈川県の地震が「関東地震」そのものと言えるのであり、ここで出てくる特定魚類の豊漁、逆に極めて深刻な不漁、或いは魚が打ち上る、貝類が打ち上る等の、通常とは明らかに異なる現象が現れた場合、警戒を強める必要が有りますが、これが単一種、独立した現象で有る時は、大地震よりもむしろ、潮の流れの変化、海水温の暫定的異常を原因と考えた方が良いだろうと思います。

 

大地震の前兆現象の場合、異常は単一特定種だけでは済まない事が多くなります。

海に関するものでは幾多の多くの不思議が出現してくる事になります。

豊漁種と不漁種が入り乱れ、蛸が豊漁でアワビやサザエなどが打ち上げられる。

その上にカニが大量移動しているなど、複数の現象が2週間以内に出てくるケースが多くなります。

 

現在日本の気温は統計的平均値から、かなりかけ離れて出てきているケースが多く、その為海水温分布も30年前とは比べ物にならない程変化していますが、これを異常と考える事は出来ず、そうした傾向が10年ほども続けば、従来異常だった状態を通常平均値と考えねばなりません。

 

旧来とは違った異常が出現してくる事になる為、過去のデータは参考くらいにしかならない事になりますが、それでも複数の現象が集中して発生する場合、関東地震発生の確率を疑うに値すると思います。

 

ただし、大きな地震の前兆現象ではスケール感が大切になります。

1923年の関東大震災の記録では、川を遡ってくるイワシを「そうけ」(竹製カゴ状の入れ物)ですくっただけで何十匹も獲れ、それを目当てに人が大勢集まったところへ地震が発生してきています。

 

また同じく関東大震災で、小学2年の女の子が、僅か10分ほどでウナギを12匹も捕まえ家に持ち帰ったところ、母親に「気持ち悪いから捨てて来なさい」と言われていますし、1983年に発生した日本海中部地震でも普段は獲れた事の無い「カワハギ」が十三湖付近で大量に獲れ、役場が「無料だから皆さん取りに来てください」と放送をかけている状態でした。

 

地震に関する魚介類の異常とはこうしたスケール感を持ち、しかもこのスケールが大きくなればなる程、異常が発生してから地震が発生するまでの時間は短くなる傾向が有ります。

 

関東大震災の時の「イワシ」は異常が発生し始めてから28時間後、小学生の女の子の「ウナギ」は37時間後、十三湖の「カワハギ」は9時間後に地震の揺れが始まっています。

 

千葉県で大量の蛤(はまぐり)が打ち上っていると言う事ですが、これ単独では通常範囲内の変化にしか過ぎない可能性が有ります。

これ以外にも立て続けに異常が確認される場合は警戒してください。

 

尚、こうした前兆現象に措いては、必ず現地で事象を確認するか、或いは現地で複数の証言を得るかして判断する事を要します。

ネット情報だけで推測で行動しない事が望まれます。


一部で東日本大震災前にも、蛤が打ち上げられたと言う情報が出回っていますが、同地震前に蛤が打ち上げられたと言う記録は、震災発生後2年の段階では報告されていませんでした。


人間の記憶と言うものは過去のデータが引き出しから取り出される形式ではなく、その都度集められて形成されるものですから、それが今作られた過去であることを自身が認識できません。

つまり現実に起こった事象から時間が経過している記憶は、本人が確信していても事実で有るとは限らない訳です。

今般千葉県の現象後に、後付けで出現している可能性が否定できませんので注意してください。

 

これまでに貝類が打ち上げられた記録では「アワビ」「サザエ」などの記録が残っていますが、蛤が打ち上げられた記録は1件も残されていません。

 

また記録の多くは貝類が豊漁になったと言うものがが殆どで在り、1872年に発生した「浜田地震」で打ち上げられたとされるアワビやサザエは、地震発生前に津波の前哨で海水が引いて、そこにいたアワビやサザエを拾っていた人たちが被災したもので有り、サザエやアワビが打ち上げられたとする情報は錯誤された情報です。

 

最後にあくまでも統計上の事では有りますが、晴れた日、気温が少し高い、或いは高めで、風が止まって静かになったら、一応身構えてみてください。

 

天気の良い日、暖かい日、風が止まった時に地震が来たという記録は古くから残っていて、静かになると言う事は野鳥が鳴かず、カエルやカジカなども鳴くのを止めるからですが、それ以上に「静か過ぎる」を状態を差しているものと推測されます。

 

 

[本文は第1979号を一部変更して第4014号とさせて頂きました]

資料編纂記述責任者 保勘平宏観地震予測資料編纂室 浅 田  正