2020/12/12 20:14



市場経済に措ける「様子を見る」と言う表現は、概ね悪い方向が確定して行く、或いは悪い材料が決定的になる事を想定していて、良い方向に在る場合は基本的に「様子を見る」必要は無いのである。

 

アメリカ合衆国連邦準備制度「FRB」の第15代議長「Janet Yellen」(ジャネット・イエレン)は当初今期10月に予想されていた合衆国の超低金利政策の終了時期に付いて、もうしばらく現政策を継続する方針を示したが、この低金利政策の継続はアメリカ経済の建て直しが予想以上に遅れていると言うよりは「不安定要因」に対処したものと言う事が出来る。

 

第14代FRB議長「Ben S Bernanke」(ベン・バーナンキ)に拠って推進されたアメリカの金融緩和政策は大別すると資産買取、つまりは通貨量の発行ベースを増やす政策、そしてもう一つは超低金利政策の2つに拠って構成されていたが、こうした状態は自由競争が原則の合衆国経済に取って、現実に追われて理想や原則が侵食を受けたようないびつさを持っていた。

 

金を借りた方が儲かるなど自由競争経済には有ってはならない事だった。

 

資本が巨大資本と政府に集中し易い経済的な方向は早期に解消しなければならないものだったのだが、当初2013年の年末にもその終了スケジュールが発表され、その翌年2014年2月に議長が交代し、ジャネット・イエレン議長が金融緩和政策終了を決定するものと見られていた。

 

しかし確かに2013年年末から通貨発行量は縮小に向かったものの、それが終了したのは2014年の末の事だった。

 

合衆国の2つの金融緩和政策の内、量的緩和政策はスケジュールに基づき終了したが、一方の超低金利政策に付いては2014年5月、就任間もないジャネット・イエレン議長が議会で「柔軟に対応する」と言う表現をし、世界市場が今期10月には合衆国の金利は上昇に転じるものと予測していたが、これも外れてしまった。

 

この背景にはギリシャのデフォルト「債務不履行」やヨーロッパ経済の長期低迷などの要因も一つだが、そんな事は既に織り込み済みだったにも関わらず超低金利政策が延長され、加えて2013年末の段階で前FRB議長のベン・バーナンキは、合衆国の景気が回復しても必要に応じて量的緩和政策も行って行くとしているのは何故か。

 

実は合衆国政府は2009年の段階でフォルクスワーゲンの排出規制に関する不正が存在する可能性を把握していた。

 

これを決定的に発見したのは日本のフォルクスワーゲンの正規代理店であり、ここで発生してくる不具合は硫黄の蓄積だった事から、2013年の段階で明確に排出ガス規制数値の不正が疑われたのである。

 

ただ、ヨーロッパ経済の長期低迷を考えるなら、これを1国で牽引しているドイツ経済の基幹企業フォルクスワーゲンの追求は慎重に行わなければならない。

 

合衆国の雇用統計が好転に転じた時点で、フォルクスワーゲン車の排出規制不正が発覚してくる背景はここに有り、雇用統計だけが経済指標ではないとしたFRB議長の見解は、既に未来に起こる経済的不安をも織り込んだものだったのである。

 

また中国主導のアジア版IMF、通貨基金設立の構想はそう長い計画に基づいたものではなかった。

それゆえ合衆国がこうした情報を得る時期とフォルクスワーゲンの不正発表の時期が偶然被って来る事になるが、ここでFRBが下していく判断とは実にシビアなものだった。

 

ギリシャのデフォルトに加え、ヨーロッパ経済の低迷はフォルクスワーゲン社の不正に拠って決定的なものになるが、元々親戚とは言え商売敵のヨーロッパ経済など、これ以上破綻しようが現状維持だろうがそう大きな違いは無い。

 

しかしその貧しさが中国経済に期待し、合衆国主導の現在の経済システムが不安定化する事は避けたい為、合衆国はこの中国主導のアジア通貨基金の不参加を各国に要請するのである。

 

もはや行く先が見えないヨーロッパ経済は合衆国が懸念していた通り、破れた風船に絆創膏を貼って膨らましている中国経済に向かい、そして貧乏貴族と丼勘定の粗暴者が一緒になればどうなるか、結果は見えている。

 

合衆国連邦準備制度が見ている様子とは中国経済の破綻なのであり、それに伴って発生するヨーロッパ経済の更なる低迷安定状態、これらが引き起す現状秩序の混乱と経済的混乱は中国共産党が存在する限り避けられない。

 

拠って、合衆国もFRBも基本的には中国が経済的に破綻する時期を見ていると言う事なのであり、こうした傾向には2012年頃からヨーロッパ経済も合衆国経済も影の期待感を持っていた。

 

中国経済は魅力だが、相手が中国共産党ではどうにもならない。

 

そんな背景が在ったのだが、背に腹は代えられないヨーロッパは一発勝負の負け戦に突入して行った。

合衆国は状況からミニマックス法を選択して行く事になる。

 

ゲーム推論の一つだが、チェスや将棋では自分の失敗を最小限に抑え、相手の失敗をを最大限になるようにすれば勝負に勝てる。

しかしこの為には先を読まねばならず、この先を読むと言う事は情報なのであり、これらが究極的になれば僅かな1つのミスが勝敗を左右する。

 

動く事がミスにもなれば動かない事でもミスになって行く。

 

更に一手進めばその先は変化し、その度に最終局面まで手を読むとするなら、やがてこれらはパターン化し省略が可能になってくる。

これがα排除法とβ排除法であり、α排除は関心の薄いものの上限の複合、β排除は関心の高いものの上限複合を示し、日本は合衆国に取ってα排除に分類される。

 

つまりは安定した情報である事から、特に注意を払う必要のない情報と言う事になるが、中国に接近しつつあるヨーロッパ経済は悪い方向でのβ排除になりつつ有る。

ヨーロッパ経済は中国経済の影響と運命共同体になって行こうとしているのである。

 

ちなみにこのミニマックス法の対極にはマクシミン法と言うものが在る。

最小の効果を最大に生かす事を言うが、これは一つの判断や決断を意味し、例えば「様子を見る」と言うような動かない事ばかりを意味している訳ではない。

 

マクシミン法で言うところの最小の効果とは、失敗を最小限に食い止める事にも通じるものであり、β排除の中に在る日本が出来る事はマクシミン法と言う事になるが、元々ミニマックス法など全く考えた事もない日本政府には「偶然法」を期待するしか無いのかも知れない・・・・。


[本文は2015年10月31日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]