2021/01/08 19:15


1929年に始まった世界恐慌、1990年に東西統合が始まったドイツ、その他第一次世界大戦、第二次世界大戦などの経験を踏まえた世界経済は、政府の言いなりになって中央銀行が金融緩和を加速する事、或いは政府と中央銀行が一体化し、通貨を危うくする事を大きな危機と捉え、ここから中央銀行の政府からの独立性の程度に拠って、その国家通貨の信用性を計るようになった。


だが中央銀行の独立性は「民主主義至上」ゆえに発生する考え方でもある。

物価と雇用のどちらを選択するかと言うテーマだが、民主主義国家の政府は「雇用」に重点を置き易い。


この為市場原理から「物価」「インフレーション」を最大に警戒する中央銀行は「金融引き締め」傾向に有り、民主主義至上の政府は「金融緩和」に走り易く、ここで中央銀行と政府が一体化していると、際限なく金融緩和が進行し、国家財政はもはやファイナンスに、鮮烈なインフレーションに歯止めがかからなくなり、その国家の通貨は紙屑同然になってしまう。


つまり中央銀行の独立性とは「民主主義」が行き過ぎて、市場経済が混乱する事を懸念した結果発生してきたものなのだが、反面景気が悪化した時、政府が金融緩和政策を取っても、中央銀行がこれの火消し役に回ってしまい相殺される為、デフレーション経済下では、これが改善されない。

1994年から2014年まで、日本がデフレーションに苦しんだのは、こうした背景も在ったからだが、安倍政権に移行して元FRB「アメリカ連邦準備制度」議長のベン・バーナンキの経済理論を取り入れ、ここから日本銀行と政府が一体となった経済政策が進んでいく。


日本に関して言えば、既に中央銀行は政府下に措かれ、国債の買取も行っているから、日本は「国家財政ファイナンス」状態になっていて、民間株式市場で40兆円も株を買っている、「内閣府日本銀行庁」状態である。


中央銀行の独立性は今や世界的に過去の理想になりつつあり、主に社会主義、共産主義に近い考え方では、従来の中央銀行の独立性を否定する傾向が在る。

「経済至上主義」から来る「社会=経済」の概念からマクロ経済優先、ミクロ経済無視傾向を生じせしめている。


そしてこうした中央銀行の非独立性政策だが、アメリカ合衆国にしても、日本にしても決定的な問題から抜け出せてはいない。

特に日本では大幅な金融緩和と世界経済の停滞から、通貨自体がバブルを起こし、これが株式市場に流れ、株式市場はハイパーインフレになったものの、実体経済の資金需要が無いため、実体経済は相変わらずのデフレーション状態に在る。


簡単に言えば表層雪崩寸前の状態と言え、「Deutsche Bundesbank(ドイツ連邦銀行)の副会長は、非公式だが、日本の実体経済と連動しない株価傾向に関して、「大変興味深い」と見解している。


ドイツは第一次世界大戦と1990年の東西統一時、インフレーションの恐ろしさを嫌と言う程味わっており、この点では伝統的に「物価指数偏重主義思想」が連綿と息づいている。


この為、ドイツがけん引するEU経済圏は、基本的に中央銀行の独立性に関しては神経質で有り、彼らからすると、日本経済の今の状況は、もしかしたら大きな破綻前の混乱として映っているのかも知れない。


日本が行った金融緩和政策の効果が出なかった原因は、市中需要を喚起する為に財政支出を行わず、主に株価偏重、国家負債の買取など、直近で視覚的な効果が無いものに支出をしたからであり、金融緩和政策自体は誤りではなかったが、唯市中に通貨量を増やせば需要が喚起されると考える等の安易さゆえで有る。


緩和された資本は1割の「持っている者」へ流れ、9割の「持たざる者」は浸透圧で、さらに吸い取られて行くしかなかった。

もしかしたら中央銀行の独立性を保持していたとしても、結果は同じだったかも知れない。

いや、おそらく中央銀行の独立性を保持していた方が、結果として9割の「持たざる者」の被害は、将来の破綻処理を考えるなら少なかったかも知れない。


今や国家財政は借金の返済を自分が印刷した紙幣で返済している状態、日本の株式市場で40兆円の株を買い、まるで博打の胴元がその博打に参加している状態、中央銀行の独立性など、泥沼の底から見えるはずもないところにまで来ている。


コロナウィルスで非常事態宣言が発令された2021年1月8日、日経平均株価は一時28000円台にまで突入したが、株価が上昇した銘柄の殆どが日本銀行系が株を買っている銘柄であり、こうして民間市場に40兆円もの金を投入し、日本銀行と言う公的な機関が利益をさらって行くのは正しい事だろうか・・・。


民間の利益がこの分失われ、40兆円もの金が民間企業が成長の機会を失うために使われている状態が、国民の為の国家と言えるだろうか・・・。

このままでは民間企業が衰退して行く一方になる。


中央銀行の独立性に関しては、確かに既存の雇用か物価かと言う側面の話では、もはや追い付いて行かない概念では在るが、あちこちで良い顔をしたい亭主に、時々厳しい現実を突きつける「母ちゃん」と言う効果は大きかった。


この母ちゃんがミニスカートにヒョウ柄のTシャツ、金髪の美魔女になって、菓子パン2つを置いて、父ちゃんとカラオケに行って夜も返って来なければどうなるか・・・。

家に残された子供たちは「母ちゃんカッコいい」では済まされないものが出てくるだろう。


2014年、当時の安倍総理と会談したドイツのメリケル首相は、安倍総理から「アベノミクスを宜しくお願いします」と言われ、「日本の立場を支持します」と答えているが、当時メリケル首相が行っていた経済対策は「金融引き締め」であり、会談後、メリケルは側近に「あの方(安倍総理)はどこまで解っていらっしゃるのかしら・・・」と苦笑いしていた。

この事に鑑みるなら「Deutsche Bundesbank」の副会長が言う「大変興味深い」は、もうそろそろ日本も終わりかな・・・と言う薄笑いにも思える。


国民の生活はウィルス騒動で混乱し、あらゆる機会に飲食店の倒産が懸念され、国内生産が大きな打撃を受けながら、バブル崩壊以降の最高値株価など、誰が見ても異常であり、その先に出てくるイメージは、膨らみ続けて、いずれか近い将来破裂する「真っ赤な風船」ではないだろうか・・・。


今年もまた、中々趣深い年になりそうだ・・・。