2021/01/16 05:09

「劣性依存症候群」でも述べたように、世の中は少数の成功者と、その反対側の立場の人が存在し、成功者の存在は反対側の状況の人が有るゆえに成立する。

 

この事から一般社会に措ける願望の質は、既存で満足な者に取っては現状維持、今の秩序を守る事を主とするが、その反対側の者に取っては現状の変化こそが願望であり、この意味に措いてはそれぞれの中間層を含めると、世の中の半分の人は崩壊も含めて現況の変化を望んでいる事になる。

 

日本政府の金融緩和政策は政府と一部の有力企業だけが恩恵に浴する政策で有り、政府はこれをして豊かなった分が一般市場へ浸透すると考えたようだが、自らを省みれば解るように、自分が出した利益を余剰だからと言って全て他者の為に消費するだろうか、それは有り得ない。

 

利益は上から順番に滞留し、一番大きな人口動態である一般庶民に辿り着いてはおらず、しかし一般庶民は景気対策の為の増税を被り、インフレーションと言う政府に金が集まる政策に拠っても金を巻き上げられている。

 

この中で始まった中国経済の衰退と中東情勢の不安定化、慢性的な構造不況のヨーロッパは、加えて難民問題に先の見えない絶望を背負い込んでいる。

 

信用の不安定化が加速してきた中国経済、絶望的なヨーロッパ経済と、石油消費の減衰に拠るオイルマネーの滞留、アメリカの金融緩和政策の打ち切り等、これら全ては日本へ資金が流れ込む事を意味している。

 

日本国債は海外から資金を調達しておらず、この意味ではその債務を日本国民が担保している最も安全な債権と言う事が出来る。

 

そしてこの事が比較的混乱が少ない日本への資金の流れを太くしていて、海外で緊急事態が発生すると瞬時にして日本へ資金が流れ込む道が出来ている。

 

日本政府が打ち出した「アベノミクス」は、海外情勢が当時の情勢のまま固定された状態を想定したものだが、国際情勢の不安定化は当然発生する。

 

黒田日銀総裁が打ち出した金融緩和のバズーカ砲など、現在の国際情勢下では1本のマッチの灯火にも及ばない事になって来ている。

 

当初下限想定だった株価16500円割れ、円相場の115円超がそろそろカーテンの裾から顔を出してきたが、株価の下落はまだ始まったばかりで、乱高下を繰り返しながらもっと下がる。

最低ラインは9000円台も有り得、円相場も流れとして100円台前半までの流れの途中経過と思うべきだろう。

つまり日本の経済政策「アベノミクス」は完全に失敗し、日本経済は混乱を迎えることになる。

 

だがここで考えて欲しいのは冒頭でも述べたように、こうした現在の政策の崩壊が必ずしも悪い事ばかりではないと言う事である。

元々利害関係が相反する場合、他者の希望は自身の絶望、他者の崩壊は自身の秩序の始まりでもある。

 

これまでの政策に拠って困窮と絶望を強いられていた国民に取っては、この政府と大企業に取って有利な政策の崩壊は自身の利益となる可能性を秘めている。

日本政府は現在の経済政策が崩壊すると次の政策を持っていない。

 

ここでは悪戯に更なる増税を行えば政権そのものが安定できず、しかし混乱を何とかしなければならないとするなら、嫌が上でも緊縮財政と財政再建に政策が向かわざるを得ない事になる。

 

もはや限界を迎えた日本政府は遅ればせながら、自身らの経費や公務員などの経費、福祉予算や年金に手をつけざるを得ない事になっていく可能性が出てくる。

つまり崩壊に拠って、これまで出来なかった事へと嫌が上でも押しやられる事になるかも知れない。

 

世界経済に鑑みても全体が落ち込んで行く中で、日本だけが拡大政策を採って成功する確率は0%だった。

文字通り荒れた現実を麻薬で逃げているような経済政策だった訳だが、歴史的に見ても拡大政策で失敗した次の政策は「緊縮」である。

 

拡大政策で失敗した場合、現実的には後が無くなる事から、民衆はもとより政府や企業でも緊縮政策を望む声が高まってくる。

 

その結果、拡大政策の反対側の王道、金を使わない方向へと動いていく事になり、ここでは確かに一般庶民と言う弱者はそれなりの不利益を被る事になるかも知れないが、日本国民の大部分は1990年以降損失に次ぐ損失で景気の悪い状態、厳しい状態には慣れてきている。

 

しかしこれまで拡大の幻想に在った者たちに取っては、感じるダメージは格段に大きいものとなる。

元々利益の無かった一般国民はこれ以上失う物は無いが、これまで利益が有って持っていた者たちは現実的に吐き出さねばならなくなる。

 

つまり経済的混乱はもはや失うものが無い庶民に取っては可能性となり、これまで成功組みとなっていた者たちには絶望になって行くと言う事であり、経済的崩壊を最も恐れなければならないのは現段階での成功組みであり、彼らは民衆の為と称してその実、自身等を守るために崩壊を阻止しようと国民に呼びかけているとも言えるのである。

 

現実には今の政策が在るから国民の多くが困窮しているかも知れない訳である。

 

戦争をしていて自軍が劣性だったその時、大きな隕石が飛んできて敵軍が全滅した。この時大きな隕石は味方に取っては天の助けだが、全滅した敵に取っては大いなる災禍となり、全滅や滅亡、崩壊を我々は誤解している。

 

それは何もかも全て無くなるのではなく、今までが無くなると言う事である。

 

実際には相対する2つの片方に在りながら、その片方を全てだと思い込んでしまう、相対する者を認めないから崩壊が絶望になるのであり、予め相対する者を理解しようとする努力が有れば、崩壊はまた希望、新たな何かの始まりなのである・・・。


[本文は2016年1月21日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]