2021/02/10 18:14



将棋や囲碁など2人でプレーするゲームに措ける次の一手を推論するとき、現状の手から伸びる次の手は何本かの選択枝(選択肢ではない)となって現れ、その次の手になると以前の手から更に何本かの選択枝が出て、ゲーム終了までにはこれが大きく広がった樹木の枝の様相を示すようになり、これが「ゲーム木」と呼ばれる形である。

 

そしてこうしたゲームで手を先読み出来る限界が、例えば5手目までは読めるがその先は読めないとしたら、現実にはその先が広がりながらも消失した状態に見える。

 

丁度海は広がって連続している事は理解しながらも先が無くなった水平線状態が現れ、もしこの水平線の少し手前に自身に取って不都合な局面が広がっているとしたら、相手に取って決定的な一手、将棋なら「王手」に近い部分の手をさすことに拠って、この水平線は一手だけ延長される事になる。

 

この事を「水平線効果」と言うが、こうした手の一般的解釈は「敗北」の前兆と看做されるものの、例えばサッカーやバスケットなどの期限の定めのあるプレーでは有効に働く場合が出てくる。

 

それゆえ期限の定めと言う条件では、経済でも有効な場面が存在する事は有り得るのだが、一般的には知られていない。

 

ゲーム木の中では期限の定めは勝敗が決した時を期限とするが、人間は寿命を初めとしてその多くが期限に囲まれている。

 

また素晴らしい一手の次には、その手の素晴らしさ故に危機を迎える事も多く、こうした事を鳥瞰的(ちょうかんてき・鳥が上空から眺めるように全体を見渡す事)に把握する事はある種「運命」を見通すに近い困難さが伴う。

 

ゲーム推論では水平線効果は高い評価の対処策とは看做されないが、こうした考え方が出てくる背景には「現実」には避けられない対処である事が認知されていると言う事であり、我々が日々行う決済や決断も、その即時的合理性に鑑みるなら、水平線効果を避け切れてはいない、むしろ常に水平線効果に近いか、水平線効果の裏返しである「怠惰」からも容易に逃れられてはいないと言う事なのである。

 

一般的に「水平線効果」に措ける水平線の先送りには、将棋なら王手に近いような、相手が即時対処が必要な手が打たれる事になる。

 

従って相手、これが行政や政府でも同じだが、ダイナミックですぐにでも効果が現れるとする政策や施策を行った場合、彼等の背後には「敗北」かそれに近い概念が存在していると言う事なのであり、経済やスポーツなど期限の定めが有る世界では有効に働く手でも、連続性がある組織や国家などの場合は水平線効果が使われた後は、ほぼ間違いなく決定的な敗北が迫ってくる事になる。

 

そして水平線は通常の状態でも追いかければ逃げて行く・・・。

 

つまり一手進めば水平線もその一手分先に伸びるのが普通、森羅万象の理なのであり、動いている者はこの水平線を追いかけ、止まっている者、止めて物事を考える者にのみに「水平線の先送り」と言う概念が存在する・・・・。