2021/03/07 21:33



人間社会が見ている「道」とは一見一本のまっすぐな道のように見えるが、その現実は小さな道の束で、しかもそれらの一本々々には決まっている長さが有り、ちょうど長さが決まっている稲藁(いなわら)で編まれた「縄」のようなものかも知れない・・・。

 

それゆえ我々の社会で発生してくる問題とは初めから存在していたものであり、人や社会が経年に拠って生じせしめる「劣化」、これを進化と呼んでも良いが現実は「怠惰」と「衰退」は、やがてそれまでの秩序を維持できず特例を設けてその初期の厳しさを緩和していく。

 

この過程でいつかの時点ではそれまでの秩序が現実の怠惰に追いついて行かなくなり、秩序に矛盾を生じせしめる。

これが「問題」と言うものの本質で有り、従って考えように拠っては「問題」は未来への道なのである。

 

また我々に取って「問題」はどこか途中で発生してきたかのように感じるかも知れないが、個人と個人が容積的にも思考的にも完全一意できない原則から、冒頭にも述べたように「問題」は初めから存在していて、ただ他の事柄が大きい為にそれが目立たないだけの事だ。

 

やがて他の事柄が経年劣化に拠って衰退を始めると、初期に存在していた問題の方がウエートを大きくする。

縄を構成していた一本の藁が終わり、そこに絡めて新たな藁が続く時と言う事が出来るかも知れない。

 

「問題」と言うものは結果としていつかの時点ではそれが主流になる事が想定される未来なので有って、これを出現させる森羅万象の因は「現実」と言う事が出来、この現実は必滅と誕生と言う事である。

 

今日持っていた物は明日には失われ、明日得られる友は明後日には失われる。

巨万の富も何万人の美女を侍らかそうとも、死後を共にすることはできず、人も物も、社会の秩序も誕生が有れば必ず滅亡もやって来る。

 

これを知りながら人間の社会は永遠や「安定」を求めるが、こうしたものは初めから生物が絶対得る事の出来ない、得てはいけないものでもある。

 

EUの発想は、その初期から景気低迷が続くヨーロッパ経済を共同で乗り切ろうと考えられたものだが、借金を抱えた者が何人集まっても、その中では一人が他の貧乏人から更に収奪して利益を上げ、その他の者はそれまで僅かに残っていた食料すら奪われるだけである。

 

これだけでもいつかの崩壊は初めから存在していた、確定している道で有ったが、これに加え中東から流出してくる難民に対し、わずかに豊かな国こそは人道的な事も言えるが、経済的に困窮している国家ではその国家そのものが存亡の危機に立たされる。

 

イギリスは初めからEU構想には消極的だった。

先進国と言われるヨーロッパ数か国ならまだしも、どう考えても自国資本が吸われてしまうだけの弱小国家が参加してくる背景に鑑みるなら、EUはドイツがけん引する貧乏国家群でしかない。

 

その上に理想だけ高邁な事を言われても、現実が付いて行かない。

 

EUに参加している事の利益とリスクでは、そのリスクを「意義」と言う思想が支えきれなくなったのが2016年6月24日(日本時間)のイギリスのEU残留をめぐる国民投票の結果であり、これがいずれはEUの未来となる、既に大きくなり始めている「道」と言える。

 

EUの崩壊は一つの秩序の崩壊になるかも知れないが、結果としてこれがやがて辿る未来の道なので有り、ではこの事が日本にどう影響するかと言えば何も変わらない。

 

安倍政権が掲げていたアベノミクスは初めら「勝算の無い博打」だった。

日本経済が国際経済と無関係ではない事は日本国民の誰もが知るところで有り、中国経済の衰退、債権国をめぐるEUの不安定さ加減、アメリカの景気回復の遅れは必然に近いほどの予想が確定していた。

 

その中で国際経済が現状を維持する事を固定基盤として考えられた詐欺的金融緩和政策は、太平洋戦争直前、敵対するアメリカが石油の禁輸措置を採った事に憤る日本政府より更に愚かな在り様だった。

 

イギリスのEU非残留が決定する以前、2016年6月8日、日本の大手銀行の一角である三菱東京UFJ銀行が「国債市場特別参加者」(プライマリーディーラー)の資格を返上すると言う報道が流れた。

 

国債市場特別参加者の資格は国、日本銀行に拠る優遇資格で有り、国債に利子が付けばそれだけで利益が約束される大変おいしい特別資格だが、一定の量の国債を買う事が義務となる為、金利がマイナスになると銀行は損失を被る。

 

しかしこうした政府や日銀の特典は、それを持っているだけで、他でも色々な慣習特典や便宜が存在し、少しくらいのマイナスなら優遇資格を持っていた方が良いのだが、こうした総合的な事を考えてもマイナスになると判断した三菱東京UFJ銀行の決断は、ある種イギリスのEU非残留決定と同じなのである。

 

民間企業が政府や中央銀行に対して不信任を突きつけたのであり、どこかでは政府とズブズブになった中央銀行を信用できない、未来を託せないと意思表示した形なので有り、今のところ三菱東京UFJ銀行以外に「国債市場特別参加者」の資格を返上する動きはみられていないが、原理としてはイギリスのEU離脱と同じである。

 

そしてイギリスのEU離脱で迎える日本の円の急騰、市場のパニック状態、日本株の暴落は、アベノミクスなど破れた羽毛布団から落ちた一本の鳥毛の如くに吹き飛ばし、ここで日本政府、日本銀行は既に手詰まりとなっている現実は、もしかしたら三菱東京UFJに追随する大手銀行を出現させる可能性が有り、そうなれば日本国債は買い取り先を失い暴落する。

 

 日本政府はこれまでとは比べ物にならないほど資金調達に関する利子負担が増加、国家予算の大半が借金とその利子の返済に使われる時代を迎える事になる。

 

日本の未来は10年、20年と言う単位ではある意味もう破たんが決定している。

 

大切なのはこうした事実を避けるのではなく、破たんを前提として今何を為すべきかを考えるべきで、働かずに金さへ持っていれば投資してそれで利益を得て暮らせるなど、そんな事がいつまでも続いた国家も民族も存在しない事を、今一度認識すべきだ。

 

多分、10年、20年の間にはもしかしたら日本ではゴミ収集が来なくなり、医療保険制度が崩壊し、街角には平気で死体が転がる状態を迎えるかも知れない。

その兆候はもう始まっている。

 

だがここで我々は絶望するのではなく、ではその時自分はどう生き残るか、どう家族を守っていくかを今から考える事が大切なので有り、三菱東京UFJ銀行やイギリスの姿から、みんなで連帯して仲良く滅亡するのではなく、その中で自分が生きる為に必死になる事、そうした個人の強い事情や意思の集合しか本当の力にはなり得ない事を知る必要が有ると思う・・・。


[本文は2016年7月11日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]