「エレベーターが待てない」 | 古典漆芸技術 夏未夕漆綾

2021/09/04 06:38



めったに出かけない会合でのことだ・・・。

その会場はビルの4階会議室だったので、メンバーたちとエレベーターを待っていたが、これがまたなかなか降りて来なくて、やがてエレベーターの前はかなりの人だかりができた。
こういう場面、私はどうしてもエレベーターに乗れる自信がない。

ゆっくり落ち着いて乗ろうと思い皆に先を譲るからだが、余りに人が多くなるとまず乗れる見込みがなくなり「仕方ない階段で行こう」と思ってしまう。
この日もそうして階段へ向かった私は3階くらいで後ろから歩く女性に気がつき、少し歩みを速めたが、大体こうして階段を使う人種と言うのは自分も含めて一様にせっかちで、ついでに負けず嫌いが多い傾向にあり、階段で抜きつ抜かれのバトルになることが多い。

そして女性の足取りは以外に速く、私はついに追い抜かれてしまった。
それもハイヒールでカツカツだったので、これでまけたら階段愛好家の名が棄たると思い、一生懸命早く歩くのだが、一向に女性には追いつけず、ついに4階まで辿り付いてしまった。
女性はちらっとこちらを見て二ヤッと笑う。

これでこの女性が自分と同類だと言うことは分かったが、しかし負けたのは悔しい。
なおかつ、なんとてっきり自分の方が早く着くだろうと思っていたのに、他のメンバーたちの方が早く着いていたのだ。
その後会合で私が終始ご機嫌斜めだったのは言うまでもない。
だが、私はこうして階段を使う人が好きだ。

かなり前のことになるが、仕事である企業を訪ねた私は、ちょうど昼ごはんの時間になったので打ち合わせを終えて帰途に着く事にしたが、この企業のオフィースは11階にあり、さすがにエレベーターを使おうと待っていたら、降りてきたエレベーターは空でこの階から乗ったのも自分だけだった。
これはラッキーだと乗り込んだが、エレベーターは10階で止まる。

まあさすがに11階で誰も乗らないとは考えていなかったが、アクシデントは突然訪れるものだ。
なんと10階で乗り込んで来たのは昼食を外で取ろうとする10人程のOLの集団、それも狭いエレベーターにぎゅうぎゅう詰めに乗り込んできたのだった。

こうなるとたった1人の男など惨めなものであっと言う間に隅に追いやられ、呼吸さえ止めて静かにしなければならなくなり、ついでに妙な緊張感からか全員無言のまま1階まで降りて行ったのである。
途中1度6階で止まったが、満員なのでまた扉が閉められ1階まで着いた頃、私は呼吸困難で倒れそうになった。
トラに囲まれたウサギの気持ちがこのときほど良く分かったことはなかった。

階段がどうのこうのと最もらしいことを書き、最後になってこういうことを言うのは気が引けるが、私がエレベーターを使わなくなったのはこの頃からだったような気もしている。

「本文は2008年11月4日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]