2022/01/29 20:02

一国の軍隊に措いて、そこに所属する兵士達の士気を乱すもの、或いは組織内に不満が積み重なる原因となるものは、例えば軍律を犯して懲罰を受ける時の処罰の重さにそれが起因するのでは無い。

処罰に不公平が存在する事が最も大きな原因となるのである。


三国志演義にも同様の命題が出てくるが、後世諺ともなった「泣いて馬謖 を斬る」と言う言葉は、その軍律、「法」が持つ公正さの重要性、それを運用する者の公正さによって法が守られ、その法の持つ公正さが現状を担保する事を説いている。


蜀漢の軍師「諸葛亮孔明」は、部下であり愛弟子とも言える馬謖 (ばしょく)の判断ミスによって自軍が大敗を喫したとき、泣きながらでも軍律に従って馬謖 を斬った。

そして「法」の権威とはこうしたものである。

「法」は唯これが存在するだけでは効力が薄いものであり、懲罰が課せられる「法」で有るなら、その懲罰の正統性を担保するものは「公平性」だけである。


従って「法」の運用に当たって、その法を行使する者が如何に公平性を保てるかによって「法」の権威や重要性は変質し、これに公平性が無く恣意的な事情、感情などが加味された場合、その法は法としての権威を失い、法であることを失効するか法の権威が著しく貶められた状態となり、結局はその法を行使しようとする者自身の前に阻害要因となって立ち塞がる事になるのである。


そしてこうした事は何も軍隊ではなくても、「法」と言う大袈裟なものでは無くても、我々の一般生活でも同じことが出てくる。

社内規定が有りながら、その実親族ばかりが昇進していく会社で働く親族以外の会社員は、その会社に忠誠を誓えるだろうか、また会社の利益が己が利益と考え、仕事に奮闘できるだろうか・・・。


更に町内会などの自治組織はどうだろうか、親しい者同士の中で行政からの情報が共有されていても、そう親しくない者の所には情報が来ないとしたら、その自治組織は信用できるだろうか、或いは同じちょっとした連絡ミスをしたときに片方が簡単に許され、自身が自治会の役員会で厳しく追及されたとしたら、次回からその自治会の意見を尊重できるだろうか。


「法」や「規則」が持つ権威は、法が適用される側の品位は問わないが、それを適用する側に品位が無いと成立せず、ましてやそれが直接の結果に関係の無い行為をして、処罰が軽くなったり重くなったりではますます法の権威を落としてしまう。

つまり「法」の権威とは「運用に当たる人間」と言う事ができ、この事から「法」はまた「人」なのである。


その上で昨今急速に崩壊しつつある野田佳彦民主党政権の在り様を考えて見るなら、まさに民主党と言う組織が持つ規律や党則を、自身が破壊していることに気が付くはずだが、先の消費税増税の衆議院通過時、反対票投じた民主党議員の処分がバラバラであり、同じ結果をもたらした者に対して処分の統一性を欠いている。

厳重注意の者も存在すれば党員資格停止6ヶ月の者も存在し、除籍処分の者もいる。

挙句の果ては除籍処分の者が除籍された後に、鳩山元総理の処分は半分の3ヶ月の党員資格停止に短縮され、他の消費税増税反対者は2ヶ月の党員資格停止処分に変更された。


これはもはや規律や党則など無くなっているに等しい。

同じ結果、同じ規律違反者には同一の基準で裁判や審理が行わなければ、そこに存在するものは裁く者の都合で処分が下されている事になり、既に処分が執行された後、他の違反者の処分が軽減されるなどあってはならない事だ。


また本来民主党の処分は「党議決定に違反した」行為に有って、その処分は後に離党しようが民主党に残ろうが、同じ処分が下されるのが公正な在り様と言うものだ。

除籍処分を受けた小沢一郎代議士とそのグループは議決時に民主党から離脱するとは公言していなかった。

それゆえ実行した行為は現在民主党に残っている代議士と同じであり、これに対して異なった処分をする事は公平性が担保されていない。


つまり民主党執行部と野田総理は処分の根拠としている党則の権威を蔑ろにし、自分達で破壊しているのであり、そもそも国民に示したマニフェストに違反しているのは野田政権である。

その党名の由来でもある「民主主義」の原則は、数の多い事をして少数意見を蔑ろにする事に非ず、少数意見をどう多数意見に反映するか、それが民主主義の基本である。


にも拘らず、反対者の意見を聞かず、国民の声を蔑ろにし、そして恣意的な処分を課するなら、それは数をしての専横と言うものであり、民主主義の対極にあるものだ。

ここに公平性は失われ、従って権威はどこからも担保されない状態、つまりは民主党が無法化したことを公言しているに等しい。


「法」はまた「人」で有るなら、この「法」を貶める者は自分をも貶める事になる。

歴代内閣の中で最低の内閣を挙げるとしたら、その上位三位が全て民主党政権になる事はもはや避けられないかも知れないし、その最高位は野田佳彦総理大臣と言う事になるのかも知れない。

少し早いが、イグノーベル賞政治部門の候補にでも推薦して置きたいところだが、それだと大好きなイグノーベル賞の権威を貶めるかな・・・。

[本文は2012年7月9日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]