2022/05/06 19:18

デフレーションが深化する主たる原因は、その発生直後の中央銀行の金融政策の失敗、並びに景気が悪化した事に対し安全策を講じようとする政府の緊縮財政に原因がある。

従ってデフレーションの解決策は明確になっていて、市場に物資が多く出回り、相対的に通貨供給量が少ない現象である事から、市場に通貨供給量を増やせば良い事になるが、この対策は時期が遅れると名目上の金利が0を下回る事はできない為、遅れれば遅れる程効果が無くなる。
これが現在の日本中央銀行の通貨の量的緩和政策にも拘らず、デフレーションが加速する要因の一つだ。

またデフレーションによって需要が落ち込めば、本来ならそれによって労働賃金も下がって行く事で労働賃金と需要のバランスを保つのが市場原理だが、労働賃金の下限には硬直性が存在し、為に一定水準まで下がった賃金がそれ以上下がっていくには時間軸が必要になっていく。
この為実際の市場価格に見合った水準まで労働賃金が下落するにはデフレーションが深化するほど時間がかかり、これによって失業率が上昇する現象が発生する。

価格が下落し市場が活力を失い、そして実質的な政府の財政出動が必要になっていくが、デフレーションが深化してからこうした財政出動を行う場合、その財源を増税に求めた場合、これは事実上その国家の国民の通貨所有率を減少させ、未来に措いて更なる不安を煽る事から実質消費の減少に繋がり、その増税分を超えたマイナス収支が発生する。

一般的にインフレーションがデフレーションよりも歓迎されるのは、金持ちをいじめるよりも一般消費者をいじめる方が国家経済的ダメージが大きくなる為だが、この点で言えばデフレーション政策は金持ち優遇政策であると言え、現在政府が行っている消費税増税、また環境税や震災復興税の創設などは確実にデフレーション深化政策である。

我々国民は消費税増税の影に隠されて国会を通過した環境税、震災復興税、それに健康保険税増税と言う消費税増税以上の増税に苦しみ、更に消費を絞って自衛策を講じる事になるが、この事は更なるデフレーションの深化以外の何ものでも無い。

一方市場動向で物資価格が下落し、それによって良い影響を受ける者も存在するが、この事をしてデフレーションには良いデフレーションと悪いデフレーションが存在するとする考え方も有るが、この考え方は劣化比較論だ。

市場動向に左右される一般大衆は価格下落による給与、所得の下落影響を受けるが、市場価格が下落すれば利益を被る者、これは一定の給与や支給金額が決定され保障されている者である。
つまりここで言うデフレーションによって利益を被る者とは公務員、年金受給者と言う事になる。

一般大衆は物価が下がるに従って自身の給与や所得も下落する事から、それに加えて増税が発生すると加速度的に通貨所有率に対する不安が生じる。
しかしあらかじめ受け取る金額が決定されている公務員や年金受給者は、物価が下がった分だけ通貨供給が増えた、若しくは通貨価値が上昇した恩恵を受けるのである。

その上で現在日本の年金受給者と公務員、介護施設や病院、それに連動して金融機関や大手企業などで働く労働人口を加えた比率が、全労働人口の35%近くにもなる現実を考えるなら、ここに緩やかなデフレーションパラダイスが発生していて、この為に日本国民自身が積極的にデフレーション脱却を考えていない現実が隠れているような気がする。

そしてここで公務員や年金受給者に加えて大手企業や金融機関労働者をデフレーションパラダイスにしたのは、即ち公的資金が投入された実績のある企業、税制優遇を受ける企業は潜在的に政府保証が存在すると見られるからであり、公的資金の投入は基本的には国民から集められた税金が投入される原理である事を考えるなら、公務員給与支出、年金支出と同じ事だからである。

つまりこの日本には潜在的にデフレーションを歓迎する者とそうで無い者が存在し、例えば税金で歳費が賄われる国会議員や官僚が、デフレーション対策に対して財政出動を躊躇する原因は、この潜在的な現状歓迎感が緩やかに作用していると考えるべきかも知れない。

更にデフレーションによって恩恵を受ける者としては国債の所有者も同じである。
国債も実質名目金額が変化しない事から、デフレーションに対して有利な状況に有り、この国債の多くは日本の金融機関が保有している。

それゆえ日本経済は完全に金持ちの所へ金が集まる仕組みとなっていて、政府が行う増税はこの仕組みを助けているだけ、デフレーションを加速させているだけなのである。

デフレーションはいつまでも続かない。

やがて日本国外から入ってくる食料、原油、鉄鋼資材などが海外でインフレーションを起こした場合、それが元で確実に日本はインフレーションを起こし、その時デフレーションを潜在的に歓迎する者が市場連動している国民から搾り取るだけ搾り取ってしまっていたとするなら、力を失った市場はこれを支えきれずハレーション、つまりは1ヶ月に30%以上の物価上昇率を示すハイパーインフレーション、若しくは食料や原材料、原油のみがハイパーインフレーションになり、その他は全て価格が下落する経済崩壊を迎える事になる。

デフレーションの解決策はそんな難しいものでは無い。

例えば消費税の期限付き撤廃、現在行っている財政出動の財源を増税から国債の発行に切り替え、それを日本銀行が買い取ってしまう方式でも日本国内に通貨供給が増加し、それによって通貨価値が下落することでデフレーションを緩和することができる。


「本文は2012年10月19日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]