2022/06/12 20:17

人類がこの地上に立った時から、その時から常に同じ過ちを繰り返しながら進化を続けて来たに違いない。
しかも生物の基本命題が拡大と種族の繁栄にある限り、その過ちは年代が新しくなる程に規模を拡大させ、愚かさもまた深くなって来たに違いない。

一方生物、取り分け人類社会の進化は自然原理との隔絶の方向に有ることから、本質的には地球の原理や宇宙の法則に逆らう方向性に有り、これをして考えるなら人類文明の進化は大きな基本法則からの離脱、つまり劣化の方向性を持っていて、為に同じ過ち、愚かさの中に有りながら、その質が時間経過と共に混沌へと向かっている。

それゆえ人類文明や社会の過ちは同じような傾向、「自己相似性」を持ちながら、常に全く同じ過ちとはならないのであり、為に古来より記された人類文明に警鐘を与える記録はマクロ、精神性の方向性を示すことは出来ても、その時代に起こった直接の問題解決方法とはならず、人間の精神的進化速度と文明の持つ漠然的進化速度には大きな誤差がある事が顧みられずに、発生してくる問題が常に進化して来ることが考えられていない。

つまり人間は自分の精神的進化速度であらゆる問題を考えるが、現実に起こる問題は自己の精神的進化速度を超えたところで発生してくるのであり、この点ではその時代に発生してくるあらゆる問題の基本的な部分は変わらくても、細部のディテールが変化していて、結果として問題の本質は人間が考えるよりも未来を走っているのである。

1990年から続く日本のデフレーションを教科書通りのデフレーションだと思ってはいけない。
このデフレーションはこれまで人類文明が経験したことのないデフレーションなのである。

近いところで言えば、日本は1920年代にもデフレーションを経験しているが、この時の失敗が第二次世界大戦へと日本をひた走らせ、結果として日本は敗戦と言う破綻でしかこのデフレーションの影を処理することができなかったが、現代の日本の状況はこれより更に深刻な事態にある。
実は国家存亡の危機に瀕しているのである。

旧約聖書中には周囲に全く人がいない所に住む2人の娘の話が出てくるが、やがて結婚適齢期を迎えた娘たちは周囲に男がいない事から父親に酒を飲ませ、意識朦朧としている父親と交わり子供を産み、その子孫が増えていくと言う行がある。

この話の意図するところは、人間は何の為に存在するかと言う事であり、手段を選ばず子孫繁栄が人間の存在意義である事を示していて,仏教でも「生きる」を付き詰めれば同じ事が言えてくる。

日本の少子高齢化社会は、実は人間の持つ基本命題に抵触する重大な問題に差し掛かっているのであり、この点で言えば日本が他国に侵攻されその支配を受けているか、若しくはそれ以上に深刻な事態、国家衰退を迎えている自覚を持たなければデフレーションの解決など絶対に不可能だ。

デフレーションの解決策の一つは通貨供給量の増加で有り、これは通常で有れば有効な策だが、それ以上に人口が高齢化し減少して行った場合、通貨供給量の増加が消費活動減少傾向に追いつかなくなる。
つまり需要限界点が年々縮小し、通貨供給量だけではこれを支えられない事態が発生してくる。

加えて消費税増税の執行こそはまだ行われていないが、電気料金に加算される「環境税」は電気料の値上げを引き起こし、その他「震災復興税」の開始、「国民健康保険料」の値上げ、自動車などにかかる自賠責保険料の値上げなどは、一つの家計を考えるなら安倍政権が唱える2%の経済成長率など簡単に吹っ飛ばしてしまう社会負担であり、社会負担の増加分が経済成長率を超えている限り実質経済成長率は下落していく。

安倍政権の言う2%の経済成長率達成は初めから通貨量の操作だけでは不可能なのである。
人口が高齢化し減少していく時は経済もまた縮小していかざるを得ないのであり、日本は1990年から実質マイナス成長が自然な状態と言える。

にも拘らず2%の経済成長率と言う中途半端な事で、しかもザルに水を注ぎ込むような事をすれば先はもう見えている。

社会保障の大幅な削減、公務員や議員の歳費大幅削減、年金の上限枠設定と、支給額の大幅削減と言うザルの底入れが有って、始めて国民市場の通貨供給量増加が生きてくるので有り、従って経済成長率の上昇は歳費削減とセットで行われ、あらゆる税や社会負担は軽減される政策が無いと、その国家の貧しさや衰退は防ぐことができない。
この事は2000年も前から分かっている基本中の基本政策である。

にも拘らず、ただ漠然と中央銀行に2%の経済成長率達成を指示したと言う安倍政権の有り様は、甚だ無責任としか言い様がない。
まるで霞を金に変えてくれるよう政府が日銀に要請しているようなものであり、経済に措ける政策を政府が放棄し、日本銀行に丸投げしている状態に等しい。

経済の進化速度と人間の精神的進化速度には政治以上の大きな開きが有り、例えばデフレーション対策もその基本は変わらないが、その影で本質は刻々と変化している。

それゆえ経済対策には古来から続くセオリーに、人間が基本から乖離してくる部分を考慮して事に当たる必要が有る。

基本的セオリーですら満足に考えられない者が、少子高齢化社会の現実、先を走っている未来など総合的に考えられるはずもなく、これらは本当はTPPなどの問題解決の緒でも有るのだが、それを安倍政権に期待することは難しい。

これから先の現実は税金や社会負担の増加、石油や食料品の値上がり、日本国籍の民間保険会社の保険料値上げに、法的制度を変化させずに社会的困窮者救済の制限、つまりは手続きによって生活保護などの給付を制限するような事態が発生し、一般国民の給与所得は2年後も更に少しづつ下落していく事になる。

何度も同じ事を言うが、安倍政権の経済成長率2%政策は、負けが込んで小金を借りて最後の一博打を打とうするが如く、しかも「半」しか出ないサイコロに「丁」を代理人に賭けさせているようなものだと思う。


[本文は2013年1月23日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]