2023/03/16 18:43

エルニーニョ現象に付いては一般的に特殊な事情、気象上の特異性を考え易いが、これは周期に拠って発生する気象上の「通常」であり、気象学的には多くの要因の中の一つでしかない。

また昨今マスメディアでも多様される「異常気象」だが、これまでに昨年と同じ気候だった年は無く、人間に取っての気象は「異常」が通常と言える。

モデルスケールで現すならば、例えば政治や権力の構造は、その初期個人々々が持っていた小さな力が集合して統一的な大きな力を発生させた後、また分散し始め、やがて砕け散った権力は周辺の劣化した場で威力を現すが、この威力は相対的なもので周辺事情の劣化に拠っても威力を大きくさせ、こうした過程は物質が崩壊する過程、精神の崩壊、生物の崩壊、気象モデルの崩壊も同じ過程を辿る。

地球温暖化に拠って発生する気象の変化は均等変化モデルではない為、その効果が大きい場では激しく、効果が小さい場では変化は微小となる。
つまり赤道付近の温度の高い地点での効果は少なく、南極や北極などの寒冷地で高い効果を現し、こうした地点はそれまでの秩序から崩壊へと向かう過程で、寒冷化の効果を周辺に分散させる。

今から30年程前、地球が温暖化に向かっているのではないかと人類が考え始めた頃から、北極圏を緩やかに蛇行する寒気の気流が時々乱れ始めていた。
それはエルニーニョ現象と連動しているかのように見えて時々独特の動きを示し、為にエルニーニョの関係式に措いて、どちらに支配的立場が有るのかは解らなかった。

2015年の日本の夏を見てみると、7月から8月前半まで2ずつ発生する台風の影響で、北からのチベット高気圧と太平洋高気圧の2つの高気圧が重なり、「高温ブロック現象」が発生していた。
高度の低い太平洋高気圧の上空10000mに、チベット高気圧が蓋をしていたのである。

2015年の夏、こうして7月から8月10日前後まで日本は記録的な猛暑に見舞われるが、この原因は寒い地域から出てくる高気圧の勢力が例年より大きかった為で有り、言うなら寒冷化の影響に拠る猛暑だったので有る。

そして相対して太平洋高気圧の勢力が弱まる9月、飛び散って日本近海までやってくる寒気の影響で激しい気温差が発生し、日本ではどこで積乱雲が急激に発生するか予測が困難な状態に陥って来ていた。
2014年の広島の土砂災害、そして今年の北関東の大水害、鬼怒川の氾濫などは小さな寒気の渦が頻繁に入ってくる為に発生しているのである。

またこうした北極圏を蛇行する気流の乱れはヨーロッパにも寒冷化をもたらし、ヨーロッパ各地で水害が発生し、アメリカ大陸でも記録的な低温と、これまで発生の前例が無い箇所でのハリケーンの発生が確認されている。

これらの事を総合すると、北極圏の寒気が既に崩壊を始めていると看做す事が出来、この崩壊現象が初期崩壊に留まり元に戻るのか、或いは決定的な部分にまで及んでいくのかの判断は五分五分と言うところまで来ている。
つまりこれからは現在マスメディアで言う「異常気象」が通常になり、これまでの気象モデルは統計としての意味を失う可能性が高まってきていると言う事になり、この場合は今までそれが発生していなかった地域にそれが発生し易くなる。

今まで1ヶ月に10日は雨が降っていた地域で雨が降っても驚かないが、1ヶ月に1日も雨が降らない地域で3日雨が降れば大変な変動になる。
この為に現在まで比較的災害の少なかった地域での変動が大きくなる事になり、漠然性総量の推定から雨が多かった地域の降水量は減少するものと考えられる。

更に気象は人間社会の根幹を為す重大な要因である事から、社会や経済、国民感情にも重大な影響を及ぼす事になり、気象が混沌(カオス)に向かっているとすれば、こうした人間社会のシステム同じように混沌へと向かっていくだろう。

政治や経済、株式に税制などは気象とは関係無いように思うかも知れないが、現実的にも見えない部分でも、偶然でも同じ傾向を辿るものであり、既に狂い初めて25年、日本の政治や経済、国民生活に鑑みるなら気象が混沌へ向かう、まさにそのものの様相だったと言え、これは世界秩序も同じだった。

また、バブル経済の崩壊からあらゆる価値観を失った日本は、価値反転性の競合に陥り、より劣化したものに価値観を向かわせたが、こうした傾向は既存残留権威、言わば官僚機構の位置を総体的に高める事になり、自身が本来自分で行わなければならない事、自身の命の責任まで他者の権威に依存する傾向を生じせしめたが、自然の事象を人間が担保する事は出来ない。

気象庁から避難勧告や特別避難指示が出るまでは安全なのではなく、既に危険なのだと言う事を忘れてはならず、自分の命は行政や政府機関が担保する事はできない。
自分の身は自分で守らなければならないのである。

ちなみに「二百十日」(9月1日)「二百二十日」(9月10日)「八朔」(8月1日・はっさく)は農家に取って最大級の厄日であり、これに併せて「越中おわら風の盆」が在り、私などは毎年「二百二十日」前後は必ず台風を警戒している。

くしくも鬼怒川が氾濫し、多くの被害をもたらした豪雨は「二百二十日」、9月10日の事だった。
いにしえの伝承とは、少なくとも我々が生きている時間より長い経験上の知恵で有るとするなら、その分の混沌(カオス)を包括したものなのかも知れない・・・。

水害で亡くなられた方々には謹んで哀悼の意を申し上げると共に、
被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます。


[本文は2015年9月11日、Yahooブログに掲載した記事を再掲載しています]